関係の定義

Last-modified: Tue, 06 Jun 2017 15:55:37 JST (2515d)
Top > 関係の定義
第4章 公理的集合論に基づく\( p \)進数の定式化へ戻る。

ここでは数学の至るところで用いられる「関係」という汎用的な概念を導入します。

定義1
\( X \)\( Y \)をクラスとする。\( X \)\( Y \)の間の関係(relation)または二項関係(binary relation)とは、\( X \times Y \)の部分クラスのことである。特に\( X = Y \)である場合は、\( X \)\( Y \)の間の関係を単に\( X \)上の関係と呼ぶ。

\( R \)\( X \)\( Y \)の間の関係とします。\( x \in X \)\( y \in Y \)に対し、論理式\( (x,y) \in R \)\( xRy \)と略記することが慣例です。以下、\( X = Y \)の場合のみを考えます。関係自体を直接扱うことは稀で、通常は以下に列挙する条件のうちいくつかを満たすものを考えます。

(反射律)任意の\( x \in X \)に対し\( xRx \)が成り立つ。
(推移律)任意の\( (x,y,z) \in X^3 \)に対し、\( xRy \)かつ\( yRz \)ならば\( xRz \)が成り立つ。
(対称律)任意の\( (x,y) \in X^2 \)に対し、\( xRy \)ならば\( yRx \)が成り立つ。
(反対称律)任意の\( (x,y) \in X^2 \)に対し、\( xRy \)かつ\( yRx \)ならば\( x=y \)が成り立つ。
(非対称律)任意の\( (x,y) \in X^2 \)に対し、\( xRy \)でないかまたは\( yRx \)でない。
(完全律)任意の\( (x,y) \in X^2 \)に対し、\( xRy \)または\( yRx \)が成り立つ。

関係が反射的(reflexive)(もしくは推移的(transitive)対称(symmetric)反対称(antisymmetric)非対称(asymmetric)完全(totalまたはcomplete))であるとは、反射律(もしくは推移律、対称律、反対称律、非対称律、完全律)を満たすということです。

反射的で推移的で対称な関係を同値関係(equivalence relation)と呼びます。それに対して反射的で推移的で反対称な関係を半順序(partial order)と呼び、更に完全な半順序を全順序(total order)または単に順序(order)と呼びます。また\( R \)が反対称である時、\( X \)上の関係\( \{ (x,y) \in X^2 \mid (xRy) \wedge (\neg(x=y) )\} \)は非対称になります*1。しばしば同値関係は\( \sim \)\( \cong \)等の記号で表記され、半順序は\( \leq \)等の記号で表記され、非対称な関係は\( < \)等の記号で表記されます。

例3(関係の例)
(1) 任意のクラス\( X \)に対し、\( \{ (x,y) \in X^2 \mid x=y \} \)\( X \)上の同値関係をなす*2
(2) 任意のクラス\( X \)に対し、包含関係(inclusion relation)と呼ばれる\( X \)上の関係\( \{ (x,y) \in X^2 \mid x \subset y \} \)\( X \)上の半順序をなし、真の包含関係(proper inclusion relation)と呼ばれる\( X \)上の関係\( \{ (x,y) \in X^2 \mid x \subsetneq y \} \)\( X \)上の非対称な関係をなし、更に正則性公理の下で\( \{ (x,y) \in X^2 \mid x \in y \} \)\( X \)上の非対称な関係をなす*3
(3) 順序数からなる任意のクラス\( X \)に対し、包含関係\( \{ (x,y) \in X^2 \mid x \subset y \} \)\( X \)上の全順序をなし*4\( \{ (x,y) \in X^2 \mid x \in y \} \)\( X \)上の非対称な関係をなす*5。特に\( \mathbb{N} \)において通常の大小関係\( \leq \)が全順序をなし、通常の真なる大小関係\( < \)が非対称な関係をなす*6
(4) \( \mathbb{Z} \)\( \mathbb{Q} \)において通常の大小関係\( \leq \)は全順序をなし、通常の真なる大小関係\( < \)は非対称な関係をなす。

半順序については後に「圏」という概念を導入した上で「付値」という\( p \)進の重要な概念と合わせて再度説明します。詳しくは、次を参照して下さい。

等号以外の具体的な同値関係の例は、後に「合同式」という概念を用いて説明します。その前に、同値関係を用いる動機の1つである、「商集合」という概念を導入します。

  • 集合の定義
  • 合同式の定義
  • 逆極限の定義
  • \( p \)進整数の定義
  • \( p \)進数の定義 その1(逆極限の商体)



*1 cf. [[章末問題4 演習1>章末問題4#first]]
*2 cf. [[等号の同値関係性>等号の定義#equivalence]]
*3 cf. [[&mathjax{\in};の非循環性(2)>正則性公理#acyclic]]
*4 cf. [[順序数が必ず包含関係を持つこと>コラム 順序数の三分律#total]]
*5 cf. [[順序数の正則性>コラム 自然数と順序数#regularity]]
*6 cf. [[自然数が順序数であること>コラム 自然数と順序数#natural]]