コラム 順序数の三分律

Last-modified: Fri, 03 Feb 2017 23:39:24 JST (1764d)
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まずは順序数の包含に関する基本性質を紹介します。

命題1(\( \textrm{Ord} \)における\( \in \)\( \subsetneq \)の同値性)
\( n \)\( m \)を順序数とする。この時、以下は同値である:
(1) \( m \in n \)
(2) \( m \subsetneq n \)

\( \textrm{Ord} \)における\( \in \)\( \subsetneq \)の同値性を示すために、次の補題を準備します。

補題2(順序数の差の性質)
\( n \)\( m \)を順序数とする。\( n \subset m \)でないならば、ある\( m' \in n \setminus m \)が存在し、\( m' \subset m \)である。

証明

\( n \subset m \)でないので、\( n \setminus m \neq \emptyset \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(5)から、ある\( m' \in n \setminus m \)が存在して任意の\( m'' \in n \setminus m \)に対して\( m' = m' ' \)または\( m' \in m' ' \)である。ここで、\( m' \in n \setminus m \)より\( m' \in n \)である。

\( m' \subset m \)であることを背理法で示す。\( m' \subset m \)でないと仮定する。この時、ある\( m' ' \in m' \)が存在して\( m' ' \notin m \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(1)と\( m' ' \in m' \in n \)から、\( m' ' \in n \)である。従って、\( m' ' \in n \setminus m \)である。\( m' \)の取り方から、\( m' = m' ' \)または\( m' \in m' ' \)である。\( m' = m' ' \)ならば、\( m' = m' ' \in m' \)であり、これは順序数の正則性に反し、矛盾する。\( m' \in m' ' \)ならば、\( m' \in m' ' \)かつ\( m' ' \in m' \)となるので、順序数の正則性に反し、矛盾する。以上より、\( m' \subset m \)である。

まず\( m \in n \)とする。\( n \)に対する強整列性の条件(1)から\( m \subset n \)である。\( m \neq n \)であることを背理法で示す。\( m = n \)と仮定する。\( n = m \in n \)であるので、順序数の正則性に反し、矛盾する。従って\( m \neq n \)である。

次に\( m \subsetneq n \)とする。順序数の差の性質から、ある\( m' \in n \setminus m \)が存在し、\( m' \subset m \)である。\( m \subset m' \)であることを示す。\( m' ' \in m \)とする。\( m \subset n \)から、\( m' ' \in n \)である。\( m' = m' ' \)と仮定すると\( m' = m' ' \in m \)となるが、これは\( m' \in n \setminus m \)に反し、矛盾する。従って\( m' \neq m' ' \)である。\( m' \in m' ' \)と仮定すると、\( m \)に対する強整列性の条件(1)と\( m' \in m' ' \in m \)から\( m' \in m \)となるが、これは\( m' \in n \setminus m \)に反し、矛盾する。従って\( m' \notin m' ' \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(4)と\( m' \neq m' ' \)かつ\( m' \notin m' ' \)から、\( m' ' \in m' \)である。以上より\( m \subset m' \)である。従って\( m = m' \in n \)である。

次に和集合や共通部分で閉じることを確認しましょう。

命題3(\( \textrm{Ord} \)が束をなすこと)
(1) \( \textrm{Ord} \)の任意の部分クラス\( N \)に対し、\( N \neq \emptyset \)ならば\( \bigcap_{n \in N} n \in \textrm{Ord} \)である。
(2) \( \textrm{Ord} \)の任意の部分集合\( N \)に対し、\( \bigcup_{n \in N} n \in \textrm{Ord} \)である。

\( \textrm{Ord} \)が束をなすことを示すために、次の補題を準備します。

補題4(\( \textrm{Ord} \)の推移性)
任意の順序数\( n \)と任意の\( n' \in n \)に対し、\( n' \)は順序数である。

証明

\( n' \in n \)より\( n' \)は集合である。\( n \)に対する強整列性の条件(1)より、\( n' \subset n \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(2)~(5)から、\( n' \)に対する強整列性の条件(2)~(5)が成り立つ。従って、\( n' \)に対する強整列性の条件(1)を示せばよい。\( m \in n' \)かつ\( m' \in m \)とする。\( m' \in m \in n' \in n \)より、\( n \)に対する強整列性の条件(1)から、\( m \in n \)かつ\( m' \in n \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(2)と\( m' \in m \in n' \)から、\( m' \in n' \)である。以上より、\( n' \)は順序数である。

(1) \( \bigcap_{n \in N} n \)\( n' \)と置く。\( N \)\( \emptyset \)でないことから、\( n' \)は集合をなす。\( n \in N \)を1つ取ると、\( n' \subset n \)\( n \)に対する強整列性の条件(2)~(5)から、\( n' \)は強整列性の条件(2)~(5)を満たす。従って、\( n' \)に対する強整列性の条件(1)を示せば良い。

\( m \in n' \)かつ任意の\( m' \in m \)とする。\( n' \)の定義より、任意の\( n \in N \subset \textrm{Ord} \)に対し\( m \in n \)であり、\( n \)に対する強整列性の条件(1)と\( m' \in m \)から、\( m' \in n \)である。すなわち\( m' \in n' \)である。以上より、\( n' \)は順序数である。


(2) \( \bigcup_{n \in N} n \)\( n' \)と置く。\( N \)が集合をなすことから、\( n' \)は集合をなす。

\( n' \)に対する強整列性の条件(1)
任意の\( m \in n' \)と任意の\( m' \in m \)に対し\( m' \in n' \)が成り立つことを示す。\( n' \)の定義より、ある\( n \in N \subset \textrm{Ord} \)が存在して\( m \in n \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(1)と\( m' \in m \in n \)より、\( m' \in n \subset n' \)である。

\( n' \)に対する強整列性の条件(2)
任意の\( m \in n' \)と任意の\( m' \in n' \)と任意の\( m' ' \in n' \)に対し\( m \in m' \)かつ\( m' \in m'' \)ならば\( m \in m' ' \)が成り立つことを示す。\( n' \)の定義から、ある\( n \in N \)が存在して\( m' ' \in n \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(2)と\( m \in m' \in m' ' \in n \)から、\( m \in m' ' \)である。

\( n' \)に対する強整列性の条件(3)
任意の\( m \in n' \)と任意の\( m' \in n' \)に対し\( m \notin m' \)または\( m' \notin m \)が成り立つことを示す。排中律により、\( m \in m' \)または\( m \notin m' \)である。\( m \notin m' \)の時は\( m \notin m' \)または\( m' \notin m \)が成り立つ。\( m \in m' \)とする。\( n' \)の定義から、ある\( n \in N \)が存在して\( m' \in n \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(1)と\( m \in m' \in n \)から、\( m \in n \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(3)から、\( m \notin m' \)または\( m' \notin m \)が成り立つ。

\( n' \)に対する強整列性の条件(4)
任意の\( m \in n' \)と任意の\( m' \in n' \)に対し\( m \neq m' \)ならば\( m \in m' \)または\( m' \in m \)が成り立つことを示す。\( n' \)の定義から、ある\( n \in N \)が存在して\( m \in n \)である。排中律により、\( m \in m' \)または\( m \notin m' \)である。\( m \in m' \)の時は\( m \in m' \)または\( m' \in m \)が成り立つ。

\( m \notin m' \)とする。\( \textrm{Ord} \)における\( \in \)\( \subsetneq \)の同値性\( m \neq m' \)かつ\( m \notin m' \)から、\( m \subset m' \)でない。すなわち\( m \setminus m' \neq \emptyset \)である。順序数の差の性質から、ある\( m' ' \in m \setminus m' \)が存在し、\( m' ' \subset m' \)である。\( m' ' \in m \setminus m' \)より、\( m' ' \notin m' \)である。\( \textrm{Ord} \)における\( \in \)\( \subsetneq \)の同値性\( m' ' \notin m' \)から、\( m' ' \subsetneq m' \)でない。従って、\( m' ' = m' \)である。以上より、\( m' = m' ' \in m \)である。特に、\( m \in m' \)または\( m' \in m \)が成り立つ。

\( n' \)に対する強整列性の条件(5)
任意の部分集合\( N' \subset n' \)に対し、\( N' \neq \emptyset \)ならばある\( m \in N' \)が存在して、任意の\( m' \in N' \)に対し\( m = m' \)または\( m \in m' \)が成り立つことを示す。\( N' \neq \emptyset \)\( n' \)の定義から、ある\( n \in N \)が存在して\( N' \cap n \neq \emptyset \)である。\( n \)に対する強整列性の条件(5)から、ある\( m \in N' \cap n \)が存在して、任意の\( m' \in N' \cap n \)に対し\( m = m' \)または\( m \in m' \)を満たす。特に、\( m \in N' \cap n \)かつ\( N' \cap n \subset n \)より\( m \in n \)である。\( m' \in N' \)とする。\( \textrm{Ord} \)の推移性\( m' \in N' \subset n' \)であることと\( n' \)の定義から、\( m' \)は順序数である。

排中律より、\( m' \in n \)または\( m' \notin n \)である。\( m' \in n \)ならば、\( m' \in N' \cap n \)となるので\( m \)の取り方から\( m = m' \)または\( m \in m' \)である。\( m' \notin n \)とする。\( \textrm{Ord} \)における\( \in \)\( \subsetneq \)の同値性から、\( m' \subsetneq n \)でない。すなわち\( m' = n \)であるかまたは\( m' \subset n \)でない。\( m' = n \)ならば、\( m \in N' \cap n \subset n = m' \)であるので、\( m = m' \)または\( m \in m' \)が成り立つ。\( m' \subset n \)でないとする。この時、\( m' \setminus n \neq \emptyset \)であるので、順序数の差の性質\( m' \)\( n \)が順序数であることからある\( m' ' \in m' \setminus n \)が存在し\( m' ' \subset n \)を満たす。\( \textrm{Ord} \)における\( \in \)\( \subsetneq \)の同値性\( m' ' \notin n \)から、\( m' ' = n \)となる。すなわち\( n \in m' \setminus n \)である。\( m' \)に対する強整列性の条件(1)と\( m \in N' \cap n \subset n \in m' \setminus n \subset m' \)より、\( m \in m' \)である。特に、\( m = m' \)または\( m \in m' \)が成り立つ。以上より、\( n' \)は順序数である。

次に、\( \textrm{Ord} \)自体が順序数のような性質を持つことを確認しましょう。

命題5(\( \textrm{Ord} \)の強整列性)
\( \textrm{Ord} \)\( \in \)に関して強整列的である。

証明

\( \textrm{Ord} \)に対する強整列性の条件(1)は\( \textrm{Ord} \)の推移性から従う。


\( \textrm{Ord} \)に対する強整列性の条件(2)
任意の\( n \in \textrm{Ord} \)と任意の\( n' \in \textrm{Ord} \)と任意の\( n' ' \in \textrm{Ord} \)に対し、\( n \in n' \)かつ\( n' \in n' ' \)ならば\( n \in n'' \)が成り立つことを示す。順序数の後続が順序数であることから、\( n' ' \cup \{ n' ' \} \in \textrm{Ord} \)である。\( n' ' \cup \{ n' ' \} \)に対する強整列性の条件(1)と\( n \in n' \in n' ' \in n' ' \cup \{ n' ' \} \)から、\( n \in n' ' \cup \{ n' ' \} \)かつ\( n' \in n' ' \in \{ n' ' \} \)である。\( n' ' \cup \{ n' ' \} \)に対する強整列性の条件(2)と\( n \in n' \in n' ' \)から、\( n \in n' ' \)である。


\( \textrm{Ord} \)に対する強整列性の条件(3)
任意の\( n \in \textrm{Ord} \)と任意の\( n' \in \textrm{Ord} \)に対し\( n \notin n' \)または\( n' \notin n \)が成り立つことを背理法で示す。\( n \in n' \)かつ\( n' \in n \)と仮定すると、順序数の正則性に反し、矛盾する。従って\( n \notin n' \)または\( n' \notin n \)が成り立つ。


\( \textrm{Ord} \)に対する強整列性の条件(4)
任意の\( n \in \textrm{Ord} \)と任意の\( n' \in \textrm{Ord} \)に対し\( n \neq n' \)ならば\( n \in n' \)または\( n' \in n \)が成り立つことを示す。順序数の後続が順序数であること\( \textrm{Ord} \)が束をなすことから、\( (n \cup \{ n \}) \cup (n' \cup \{ n' \}) \)は順序数である。\( (n \cup \{ n \}) \cup (n' \cup \{ n' \}) \)に対する強整列性の条件(4)と\( n \in (n \cup \{ n \}) \cup (n' \cup \{ n' \}) \)かつ\( n' \in (n \cup \{ n \}) \cup (n' \cup \{ n' \}) \)から、\( n \in n' \)または\( n' \in n \)である。


\( \textrm{Ord} \)に対する強整列性の条件(5)
任意の部分クラス\( N \subset \textrm{Ord} \)に対し、\( N \neq \emptyset \)ならばある\( m \in N \)が存在して、任意の\( m' \in N \)に対し\( m = m' \)または\( m \in m' \)が成り立つことを示す。\( \bigcap_{n \in N} n \)\( m \)と置く。\( \textrm{Ord} \)が束をなすことから、\( m \)は順序数である。順序数の正則性から、\( m \notin m \)である。\( m \)の定義と\( m \notin m \)から、ある\( n \in N \)が存在して\( m \notin n \)である。\( \textrm{Ord} \)における\( \in \)\( \subsetneq \)の同値性\( m \notin n \)から、\( m \subsetneq n \)でない。\( m \)の定義と\( n \in N \)から、\( m \subset n \)である。従って、\( m = n \in N \)である。\( m \)の定義から、任意の\( m' \in N \)に対して\( m \subset m' \)であり、\( \textrm{Ord} \)における\( \in \)\( \subsetneq \)の同値性\( m \notin n \)から、\( m = m' \)または\( m \in m' \)である。以上より、\( \textrm{Ord} \)\( \in \)に関して強整列的である。

\( \mathbb{N} \)を定義する前に\( 0 \in 1 \in 2 \in 3 \in 4 \in 5 \in 6 \in 7 \in 8 \in 9 \)という関係を述べましたが、\( \textrm{Ord} \)の強整列性により\( \textrm{Ord} \)に対する強整列性の条件(3)と(4)が保証されることから、順序数全体も\( \in \)に関して同様に一直線上に並ぶことが分かります。

系6(三分律)
2つの任意の順序数\( n \)\( m \)に対して、以下のうちちょうど1つが成り立つ。
(1) \( n \in m \)
(2) \( n = m \)
(3) \( n \ni m \)

三分律と順序数の強整列性の条件(1)から、次が従います。

系7(順序数が必ず包含関係を持つこと)
2つの任意の順序数\( n \)\( m \)に対して、\( n \subset m \)または\( m \subset n \)が成り立つ。

三分律順序数の後続が順序数であることから、次が従います。

系8(後続が\( \in \)を保つこと)
2つの任意の順序数\( n \)\( m \)に対し、以下は同値である:
(1) \( m \in n \)
(2) \( m \cup \{ m \} \in n \cup \{ n \} \)

また、\( \textrm{Ord} \)が順序数のような性質を持つだけで、実際には順序数でないことも分かります。

系9(ブラリ・フォルティの背理)
\( \textrm{Ord} \)は集合でない。

証明

\( \textrm{Ord} \)が集合でないことを背理法で示す。\( \textrm{Ord} \)が集合であるとする。\( \textrm{Ord} \)の強整列性から、\( \textrm{Ord} \)は順序数をなす。すなわち\( \textrm{Ord} \in \textrm{Ord} \)である。これは順序数の正則性に反し、矛盾する。従って\( \textrm{Ord} \)は集合でない。

それでは次にいよいよ\( \mathbb{N} \)の特徴付けを行います。