半群準同型

Last-modified: Thu, 13 Jul 2017 07:57:18 JST (1605d)
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ここでは「マグマ準同型」という概念を導入し、その特別なものとして「半群準同型」や「モノイド準同型」という概念を紹介します。マグマ準同型自体はそこまで頻出の概念ではありませんが、「マグマにとってのマグマ準同型」や「半群にとっての半群準同型」や「モノイドにとってのモノイド準同型」は「集合にとっての写像」および「圏にとっての関手」であることに加え、これらは後に導入する「群準同型」という重要な概念につながるものなので丁寧に見ていきましょう。

定義1(マグマ準同型の定義)
\( (G_0,\times_0) \)\( (G_1,\times_1) \)をマグマとする。\( (G_0,\times_0) \)から\( (G_1,\times_1) \)へのマグマ準同型(magma homomorphism)とは、写像\( f \colon G_0 \to G_1 \)であって、任意の\( (g,g') \in G_0^2 \)に対し\( f(g \times_0 g') = f(g) \times_1 f(g') \)を満たすもののことである。

\( (G_0,\times_0) \)から\( (G_1,\times_1) \)へのマグマ準同型であるような写像\( f \colon G_0 \to G_1 \)」という文章を「マグマ準同型\( f \colon (G_0,\times_0) \to (G_1,\times_1) \)」と略すことが多く、Encyclpedia of \( P \)-adic Numbersでもその表現を採用します。また「マグマ準同型\( f \colon (G_0,\times_0) \to (G_1,\times_1) \)」と書かずに単に「\( f \colon (G_0,\times_0) \to (G_1,\times_1) \)」とだけ宣言することもありますが、その表現では集合対の間の写像と表記が混ざってしまいます*1ので、Encyclpedia of \( P \)-adic Numbersでは避けるようにします。

マグマ全体のクラスとマグマ準同型全体のクラスは\( \textrm{Set} \)下部構造に持つ圏をなすので、それをここだけの記号で\( \textrm{Mag} \)と書くことにします。マグマ準同型\( f \colon (G_0,\times_0) \to (G_1,\times_1) \)の写像としての定義域と終域はそれぞれ\( G_0 \)\( G_1 \)ですが、圏\( \textrm{Mag} \)の射としての定義域と終域はそれぞれ\( (G_0,\times_0) \)\( (G_1,\times_1) \)になります。そのため、通常は「\( f \)の定義域」と言ったら文脈に応じて\( G_0 \)\( (G_0,\times_0) \)のどちらか一方を指し、「\( f \)の終域」と言ったら文脈に応じて\( G_1 \)\( (G_1,\times_1) \)のどちらか一方を指します。曖昧なようですが多くの場合は混乱を生じませんし、混乱が生じやすい状況では正確に「\( f \)の写像としての定義域」や「\( f \)\( \textrm{Mag} \)の射としての定義域」のように言い分ければ良いです。

マグマ準同型であって、定義域と終域が共に半群であるようなものを半群準同型(semigroup homomorphism)と呼びます。また「半群」のような、条件付きマグマを指す用語\( C \)に対し、「マグマ準同型であって、定義域と終域が共に\( C \)であるようなもの」という文章を「\( C \)の間のマグマ準同型」と略すことが多いです。この言葉使いにおいては、半群準同型が「半群の間のマグマ準同型」と言い表されます。

またマグマ準同型に対する言葉使いと同様に、「\( (G_0,\times_0) \)から\( (G_1,\times_1) \)への半群準同型であるような写像\( f \colon G_0 \to G_1 \)」という文章を「半群準同型\( f \colon (G_0,\times_0) \to (G_1,\times_1) \)」と略すことが多いです。今後もマグマ準同型や半群準同型に限らず同様の言い回しを採用することとします。

マグマ準同型であって、定義域と終域が共にモノイドでありかつ定義域の単位元を終域の単位元に写すものをモノイド準同型(monoid homomorphism)と呼びます。また「単位元」のような、与えられたマグマ構造から定まる下部構造の集合の元の性質\( P \)に対し、「定義域の\( P \)であるような元を終域の\( P \)であるような元に写す」という文章を「\( P \)であるような元を保つ」等のように略すことが多いです。この言葉使いにおいては、モノイド準同型が「モノイドの間の単位元を保つマグマ準同型」と言い表されます。

例2(半群準同型の例)
\( d \in \mathbb{N} \)とする。写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ n \mapsto n + d \)\( f \)と置き、写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ n \mapsto dn \)\( g \)と置き、写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ n \mapsto n^d \)\( h \)と置く。\( f \)\( g \)\( h \)がモノイド\( (\mathbb{N},+) \)\( (\mathbb{N},\times) \)を定義域や終域に持つ半群準同型をなすかどうかを確認する。
(1) \( d = 0>の時、\( f \)\( \textrm{id}_{\mathbb{N}} \)に他ならず、\( (\mathbb{N},+) \)から\( (\mathbb{N},+) \)へのモノイド準同型をなし、\( (\mathbb{N},\times) \)から\( (\mathbb{N},\times) \)へのモノイド準同型をなし、それら以外の定義域と終域の組み合わせでは半群準同型をなさない。\( d \neq 0 \)の時、&mathjax{f \)は定義域と終域のいかなる組み合わせでも半群準同型をなさない。
(2) \( g \)\( (\mathbb{N},+) \)から\( (\mathbb{N},+) \)へのモノイド準同型である。定義域と終域の他の組み合わせを考える。\( d = 0 \)の時、\( g \)\( (\mathbb{N},\times) \)から\( (\mathbb{N},\times) \)への半群準同型であってモノイド準同型でないものとなり、\( (\mathbb{N},\times) \)から\( (\mathbb{N},+) \)への半群準同型であってモノイド準同型でないものとなり、\( (\mathbb{N},+) \)から\( (\mathbb{N},\times) \)へのモノイド準同型となる。\( d = 1 \)の時\( g \)\( \textrm{id}_{\mathbb{N}} \)に他ならず\( (\mathbb{N},\times) \)から\( (\mathbb{N},\times) \)へのモノイド準同型をなすが、それ以外の定義域と終域の組み合わせでは半群準同型をなさない。\( d \neq 0,1 \)の時、\( g \)は定義域と終域のいかなる組み合わせでも半群準同型をなさない。
(3) \( h \)\( (\mathbb{N},\times) \)から\( (\mathbb{N},\times) \)へのモノイド準同型である。定義域と終域の他の組み合わせを考える。\( d = 0 \)の時、\( h \)\( (\mathbb{N},+) \)から\( (\mathbb{N},\times) \)へのモノイド準同型をなすが、それ以外の定義域と終域の組み合わせでは半群準同型をなさない。\( d = 1 \)の時、\( h \)\( \textrm{id}_{\mathbb{N}} \)に他ならず、\( (\mathbb{N},+) \)から\( (\mathbb{N},+) \)へのモノイド準同型をなすが、それ以外の定義域と終域の組み合わせでは半群準同型をなさない。\( d \neq 0,1 \)の時、\( h \)は定義域と終域のいかなる組み合わせでも半群準同型をなさない。

半群全体のクラスと半群準同型全体のクラスは\( \textrm{Mag} \)の部分圏をなすので、それをここだけの記号で\( \textrm{SGrp} \)と書くことにします。モノイド全体のクラスとモノイド同型全体のクラスは\( \textrm{SGrp} \)の部分圏をなすので、それをここだけの記号で\( \textrm{Mon} \)と書くことにします。定義から\( \textrm{SGrp} \)\( \textrm{Mag} \)の充満部分圏となりますが、半群準同型の例で見たように\( \textrm{Mon} \)\( \textrm{SGrp} \)の充満でない部分圏となります。

モノイドに対する小圏の構成で見たように、モノイドを小圏に対応させることが出来ます。この対応は自然にモノイド準同型を関手に対応させることが出来ます。このことを正確に見るために、モノイド\( (G,\times) \)に対応する小圏\( F_{\textrm{ob}}(G,\times) \)と置きましょう。

任意のモノイド準同型\( f \colon (G_0,\times_0) \to (G_1,\times_1) \)に対し、小圏\( F_{\textrm{ob}}(G_0,\times_0) \)小圏\( F_{\textrm{ob}}(G_1,\times_1) \)とクラス関数\( \textrm{ob}(F_{\textrm{ob}}(G_0,\times_0)) = \{ G_0 \} \to \{ G_1 \} = \textrm{ob}(F_{\textrm{ob}}(G_1,\times_1) ), \ G_0 \mapsto G_1 \)とクラス関数\( f \colon \textrm{hom}(F_{\textrm{ob}}(G_0,\times_0)) = G_0 \to G_1 = \textrm{hom}(F_{\textrm{ob}}(G_1,\times_1) ) \)の4つ組を\( F_{\textrm{hom}}(f) \)と置くと、\( F_{\textrm{hom}}(f) \)関手\( F_{\textrm{ob}}(G_0,\times_0) \to F_{\textrm{ob}}(G_1,\times_1) \)をなします。

\( \textrm{Mon} \)と圏\( \textrm{Cat} \)とクラス関数\( F_{\textrm{ob}} \colon \textrm{ob}(\textrm{Mon}) \to \textrm{ob}(\textrm{Cat}), \ (G,\times) \mapsto F_{\textrm{ob}}(G,\times) \)とクラス関数\( F_{\textrm{hom}} \colon \textrm{hom}(\textrm{Mon}) \to \textrm{hom}(\textrm{Cat}), \ f \mapsto F_{\textrm{hom}}(f) \)の4つ組\( F = (\textrm{Mon},\textrm{Cat},F_{\textrm{ob}},F_{\textrm{hom}}) \)\( F \)は忠実充満関手をなします。\( F \)をここでは\( \textrm{Mon} \)から\( \textrm{Cat} \)への自然な埋め込みと呼ぶことにします。

さて、半群やモノイドのような代数構造を考え準同型を定式化する利点の一つとして、それらを他の圏の対象に「作用」させていく、ということが定式化出来ます。というわけで、次は半群の作用について紹介しましょう。

  • 半群作用
  • 半群と普遍性



*1 ただしそれによって混乱が生じるような文脈はあまり考えられません。