定式化1 p冪を法とした合同式

Last-modified: Sun, 30 Apr 2017 20:40:51 JST (1679d)
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自然数全体の集合を\( \mathbb{N} \)、整数全体の集合を\( \mathbb{Z} \)、有理数全体の集合を\( \mathbb{Q} \)と置きます。



合同式の復習

ここでは合同式の知識については仮定しますので、合同式の諸性質を復習として紹介はしても証明はしません。合同式の厳密な定義や諸性質の証明が気になる人は次を参照して下さい。

  • 合同式の定義

\( m \)を整数とします。整数\( n_0 \)\( n_1 \)\( m \)を法として合同であるとは、\( n_0-n_1 \)\( m \)の倍数である、すなわち\( n_0-n_1 = km \)を満たす整数\( k \)が存在するということです。このことを\( n_1 \equiv n_2 \ [\textrm{mod} \ m] \)と表記し、このような式を合同式と呼びます。つまり\( m \)を法とする合同式を考えるということは、\( m = 0 \)の時には普通の等式を考えることに他ならず、\( m \neq 0 \)の時には\( m \)で割った余りのみを考えていることになります。特に\( m = \pm 1 \)の時は全ての整数が合同式で結ばれます。\( m \)を固定している状況で\( m \)を明記しなくても分かる時は\( [\textrm{mod} \ m] \)の部分を省略することがあります。さて、合同式には「同値関係性」という性質が成り立ちます。

演習1(合同式の同値関係性の証明演習)
\( m \)\( n_0 \)\( n_1 \)\( n_2 \)を整数とする。この時、以下が成り立つということを示せ。
(1) \( n_0 \equiv n_0 \ [\textrm{mod} \ m] \)
(2) \( n_0 \equiv n_1 \ [\textrm{mod} \ m] \)ならば\( n_1 \equiv n_0 \ [\textrm{mod} \ m] \)
(3) \( n_0 \equiv n_1 \ [\textrm{mod} \ m] \)かつ\( n_1 \equiv n_2 \ [\textrm{mod} \ m] \)ならば\( n_0 \equiv n_2 \ [\textrm{mod} \ m] \)

合同式の同値関係性によって、「合同式で結ばれる整数同士を同一視する」という操作が正当化され、そのように同一視された数たちの集合を\( \mathbb{Z}/m \mathbb{Z} \)と表記します。\( \mathbb{Z}/m \mathbb{Z} \)において整数\( n \)に対応する数を、ここでは\( [n]_m \)と書くことにしましょう。つまり\( m \neq 0 \)の場合に\( m \)を法とする合同式を考えるということは、整数\( n \)\( n \)\( m \)で割った余り\( r \)を同一視することであり、\( \mathbb{Z}/m \mathbb{Z} \)において\( [n]_m = [r]_m \)という等式が成り立つということです。整数の間の関係式としては合同式でしたが、合同式を用いて同一視された数の間の関係式としては完全な等式となります。特に\( m = 0 \)の場合に\( \mathbb{Z}/m \mathbb{Z} \)は整数に\( [ \ ]_0 \)記号を付けただけのものの集合でありそれは\( \mathbb{Z} \)と大差がないですが、\( m \neq 0 \)の場合だと\( \mathbb{Z}/m \mathbb{Z} \)\( [0]_m, [1]_m, \ldots, [\lvert m \rvert -1]_m \)というちょうど\( \lvert m \rvert \)個の要素からなる集合となります。

異なる数を同一視することが厳密にはどのようなことをしているのか、が気になる人は次を参照して下さい。

  • 集合の定義

合同式は等式のように、和と差と積について良い性質を持ちます。ただし商については限定的な性質しか持ちません。

演習2(合同式と四則演算の証明演習)
\( m \)\( n_0 \)\( n_1 \)\( n_2 \)\( n_3 \)を整数とする。この時、以下が成り立つということを示せ。
(1) \( n_0 \equiv n_1 \ [\textrm{mod} \ m] \)かつ\( n_2 \equiv n_3 \ [\textrm{mod} \ m] \)ならば\( n_0 + n_2 \equiv n_1 + n_3 \ [\textrm{mod} \ m] \)
(2) \( n_0 \equiv n_1 \ [\textrm{mod} \ m] \)かつ\( n_2 \equiv n_3 \ [\textrm{mod} \ m] \)ならば\( n_0 - n_2 \equiv n_1 - n_3 \ [\textrm{mod} \ m] \)
(3) \( n_0 \equiv n_1 \ [\textrm{mod} \ m] \)かつ\( n_2 \equiv n_3 \ [\textrm{mod} \ m] \)ならば\( n_0 n_2 \equiv n_1 n_3 \ [\textrm{mod} \ m] \)
(4) \( n_0 n_2 \equiv n_1 n_3 \ [\textrm{mod} \ m] \)かつ\( n_2 \equiv n_3 \ [\textrm{mod} \ m] \)かつ\( n_2 \)\( m \)が互いに素であるならば\( n_0 \equiv n_1 \ [\textrm{mod} \ m] \)

合同式と四則演算の間の関係によって、\( \mathbb{Z} \)の和と差と積は\( \mathbb{Z}/m \mathbb{Z} \)の和と差と積を定めます。少し例を見てみましょう。

例3(\( \mathbb{Z}/m \mathbb{Z} \)での計算)
\( m = 5 \)の場合を考えると、以下のような等式が成り立つ。
(1) \( [2]_5 + [4]_5 = [2 + 4]_5 = [6]_5 = [1]_5 \)
(2) \( [1]_5 - [3]_5 = [1 - 3]_5 = [-2]_5 = [3]_5 \)
(3) \( [4]_5 [3]_5 - [1]_5 [2]_5 + [0]_5 = [12 - 2 + 0]_5 = [10]_5 = [0]_5 \)

以上で合同式の復習を終わります。



法の変更と射影

整数\( m \)に対して、\( m \)を法として合同な数同士は、当然\( m \)の約数を法としても合同となります。何故ならば、\( m \)の倍数は\( m \)の約数の倍数でもあるからです。この議論がすんなり納得がいかない人は、合同式の定義を忘れてしまっている可能性があるので、少し上を見直して下さい。

特に、整数\( m_0 \)\( m_1 \)の約数である時、\( [\textrm{mod} \ m_1] \)で同一視出来る数同士は\( [\textrm{mod} \ m_0] \)でも同一視出来ることになります。このことから、いかなる整数\( n \)に対しても\( [n]_{m_1} \)\( [n]_{m_0} \)に送るような写像\( P_{m_1 \to m_0} \colon \mathbb{Z}/m_1 \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}/m_0 \mathbb{Z}, \ [n]_{m_1} \mapsto [n]_{m_0} \)が定義出来ます。同一視の関係なんて考えずとも\( [n]_{m_1} \)の行き先を\( [n]_{m_0} \)と決めることで写像がただ1つに定まるじゃないか、と思うかもしれませんが、それは誤解です。確かに高々1つではありますが、同一視の関係を考えて初めて写像が実際に存在することが分かります。何故なら、\( \mathbb{Z}/m_1 \mathbb{Z} \)の要素\( x \)を1つ与えるとそれは必ず何らかの整数\( n \)を用いて\( x = [n]_{m_1} \)と書き表せますが、そのような\( n \)\( x \)に対してただ1つではないからです。\( x \)の行き先\( P_{m_1 \to m_0}(x) \)の定義\( [n]_{m_0} \)\( n \)という\( x \)からただ1つには定まらない数を使っている以上、\( [n]_{m_0} \)という値が\( n \)の選び方によらず\( x \)のみによって決まることを示さなければなりません。そのための議論が、上に述べた同一視の関係性というわけです。このように、\( x \)\( n \)のような別のパラメータで表して\( x \)の行き先を\( n \)で表示したものが\( n \)の選び方によらないということを、\( x \)の行き先が代表元の取り方によらない(well-defined)等のような言い方をします。

さて、このような写像\( P_{m_1 \to m_0} \)を射影と呼ぶことが多いです。少し射影の基本性質を見てみましょう。

命題4(射影の基本性質)
(1) \( m_0 \)を整数とし、\( m_1 \)\( m_0 \)の倍数である整数とする。この時、\( P_{m_1 \to m_0} \)は全射であり、和と差と積を保つ。
(2) \( m_0 \)を整数とし、\( m_1 \)\( m_0 \)の倍数である整数とし、\( m_2 \)\( m_1 \)の倍数である整数とする。この時、\( P_{m_1 \to m_0} \)\( P_{m_2 \to m_1} \)の合成\( P_{m_1 \to m_0} \circ P_{m_2 \to m_1} \)\( P_{m_2 \to m_0} \)と等しい。

証明

(1) \( y \in \mathbb{Z}/m_0 \mathbb{Z} \)とする。整数\( n \)を用いて\( y = [n]_{m_0} \)と置く。この時、\( P_{m_1 \to m_0}([n]_{m_1}) = [n]_{m_0} = y \)である。よって\( P_{m_1 \to m_0} \)は全射である。

\( x_0, x_1 \in \mathbb{Z}/m_1 \mathbb{Z} \)とする。\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 + x_1) = P_{m_1 \to m_0}(x_0) + P_{m_1 \to m_0}(x_1) \)かつ\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 - x_1) = P_{m_1 \to m_0}(x_0) - P_{m_1 \to m_0}(x_1) \)かつ\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 x_1) = P_{m_1 \to m_0}(x_0) P_{m_1 \to m_0}(x_1) \)であることを示す。整数\( n_0 \)\( n_1 \)を用いて\( x_0 = [n_0]_{m_1}, x_1 = [n_1]_{m_1] \)と置く。

\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 + x_1) = P_{m_1 \to m_0}([n_0]_{m_1} + [n_1]_{m_1}) = P_{m_1 \to m_0}([n_0 + n_1]_{m_1}) = [n_0 + n_1]_{m_0} = [n_0]_{m_0} + [n_1]_{m_0} \)であり、\( P_{m_1 \to m_0}(x_0) + P_{m_1 \to m_0}(x_1) = P_{m_1 \to m_0}([n_0]_{m_1}) + P_{m_1 \to m_0}([n_1]_{m_1}) = [n_0]_{m_0} + [n_1]_{m_0} \)である。従って\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 + x_1) = P_{m_1 \to m_0}(x_0) + P_{m_1 \to m_0}(x_1) \)である。

\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 - x_1) = P_{m_1 \to m_0}([n_0]_{m_1} - [n_1]_{m_1}) = P_{m_1 \to m_0}([n_0 - n_1]_{m_1}) = [n_0 - n_1]_{m_0} = [n_0]_{m_0} - [n_1]_{m_0} \)であり、\( P_{m_1 \to m_0}(x_0) - P_{m_1 \to m_0}(x_1) = P_{m_1 \to m_0}([n_0]_{m_1}) - P_{m_1 \to m_0}([n_1]_{m_1}) = [n_0]_{m_0} - [n_1]_{m_0} \)である。従って\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 - x_1) = P_{m_1 \to m_0}(x_0) - P_{m_1 \to m_0}(x_1) \)である。

\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 x_1) = P_{m_1 \to m_0}([n_0]_{m_1} [n_1]_{m_1}) = P_{m_1 \to m_0}([n_0 n_1]_{m_1}) = [n_0 n_1]_{m_0} = [n_0]_{m_0} [n_1]_{m_0} \)であり、\( P_{m_1 \to m_0}(x_0) P_{m_1 \to m_0}(x_1) = P_{m_1 \to m_0}([n_0]_{m_1}) P_{m_1 \to m_0}([n_1]_{m_1}) = [n_0]_{m_0} [n_1]_{m_0} \)である。従って\( P_{m_1 \to m_0}(x_0 x_1) = P_{m_1 \to m_0}(x_0) P_{m_1 \to m_0}(x_1) \)である。

以上より、\( P_{m_1 \to m_0} \)は和と差と積を保つ。

(2) \( x \in \mathbb{Z}/m_2 \mathbb{Z} \)とする。整数\( n \)を用いて\( x = [n]_{m_2} \)と置く。この時、\( (P_{m_1 \to m_0} \circ P_{m_2 \to m_1})(x) = P_{m_1 \to m_0}(P_{m_2 \to m_1}(x) ) = P_{m_1 \to m_0}(P_{m_2 \to m_1}([n]_{m_2}) ) = P_{m_1 \to m_0}([n]_{m_1}) = [n]_{m_0} \)かつ\( P_{m_2 \to m_0}(x) = P_{m_2 \to m_0}([n]_{m_2}) = [n]_{m_0} \)であるので、\( (P_{m_1 \to m_0} \circ P_{m_2 \to m_1})(x) = P_{m_2 \to m_0}(x) \)である。よって\( P_{m_1 \to m_0} \circ P_{m_2 \to m_0} \)\( P_{m_2 \to m_0} \)は等しい。

つまり、射影は「全射環準同型」と呼ばれる性質を持ち、射影を複数回のステップに分けられる場合は分けて射影しても一気に射影しても変わらない、ということです。



\( p \)進整数環の定義

以下では\( p \)\( 2 \)以上の自然数とします。\( ([0]_1, [3]_p, [2]_{p^2}, [-1]_{p^3}, [4]_{p^4}, \ldots) \)のように「各自然数\( r \)に対して第\( r \)項目が\( \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)の要素であるような列」の全体のなす集合を\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)と置きます。つまり\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)の要素\( (a_r)_{r = 0}^{\infty} \)は各自然数\( r \)に対して\( a_r \in \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)を満たします。特に\( a_0 \)の候補は\( [0]_1 \)の1パターンしかなく*1\( a_1 \)の候補は\( [0]_p, [1]_p, \ldots, [p-1]_p \)\( p \)パターンで、\( a_2 \)の候補は\( [0]_{p^2}, [1]_{p^2}, \ldots, \ldots, [p^2-1]_{p^2} \)\( p^2 \)パターンです。

\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)の各成分には和と差と積が定義されていたので、成分ごとに計算することで\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)の要素同士の和と差と積を定義できます。

例5(\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)の和と差と積の計算例)
(1) \( ([2r-1]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} + ([5r+2]_{p^r})_{r = 0}^{\infty}) = ([7r+1]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)
(2) \( ([r]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} - ([3r-4]_{p^r})_{r = 0}^{\infty}) = ([-2r+4]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)
(3) \( ([r+1]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} + ([r-1]_{p^r})_{r = 0}^{\infty}) = ([r^2-1]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)

各整数\( n \)を列\( n^{(p)} := ([n]_1, [n]_p, [n]_{p^2}, \ldots) \)に送ることで、写像\( \mathbb{Z} \to \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z}, \ n \mapsto n^{(p)} \)が定義されます。以下の議論により、この写像が単射となることが分かります。

命題6(整数の法\( p \)冪表示の単射性)
\( n_0 \)\( n_1 \)を整数とする。この時、\( n_0^{(p)} = n_1^{(p)} \)であることと\( n_0 = n_1 \)であることは同値である。

証明

\( n_0 = n_1 \)ならば\( n_0^{(p)} = n_1^{(p)} \)であることは良い。\( n_0^{(p)} = n_1^{(p)} \)であると仮定する。\( n_0 = n_1 \)を示す。\( p \geq 2 \)なので、\( \lim_{r \to \infty} p^r = \infty \)である。従って、\( \lvert n_0 \rvert + \lvert n_1 \rvert < p^r \)を満たすような自然数\( r \)が存在する。列としての等式\( n_0^{(p)} = n_1^{(p)} \)から、両辺の第\( r \)項目を比較することで\( [n_0]_{p^r} = [n_1]_{p^r} \)を得る。これはすなわち、\( n_0 - n_1 \)\( p^r \)の倍数ということである。しかし\( \lvert n_0 - n_1 \rvert \leq \lvert n_0 \rvert + \lvert n_1 \rvert < p^r \)であるので、\( \lvert n_0 - n_1 \rvert = 0 \)である。以上より、\( n_0 = n_1 \)である。

一方でこの写像は全射ではありません。実際、\( ([r]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} = ([0]_1, [1]_p, [2]_{p^2}, \ldots) \)という列はいかなる整数\( n \)を用いても\( n^{(p)} \)と表せないことが容易に分かります。

また、この写像は和と差と積を保ちます。つまりいかなる整数\( n_0 \)\( n_1 \)に対しても、整数としての和\( n_0 + n_1 \)や差\( n_0 - n_1 \)や積\( n_0 n_1 \)の像\( (n_0 + n_1)^{(p)} \)\( (n_0 - n_1)^{(p)} \)\( (n_0 n_1)^{(p)} \)は、それぞれ像の和\( n_0^{(p)} + n_1^{(p)} \)や差\( n_0^{(p)} - n_1^{(p)} \)や積\( n_0^{(p)} n_1^{(p)} \)と一致します。

さて、\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)という集合の中で、特に良い性質を持つ要素だけを取り出そうと思います。

定義7(\( p \)進整数の定義)
\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)の要素\( (a_r)_{r = 0}^{\infty} \)\( p \)進整数であるとは、いかなる自然数\( r \)に対しても\( P_{p^{r+1} \to p^r}(a_{r+1}) = a_r \)が成り立つということである。\( p \)進整数全体のなす\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)の部分集合を\( \mathbb{Z}_p \)と置き、\( p \)進整数環と呼ぶ。

射影の基本性質を繰り返し適用することにより、\( p \)進整数\( (a_r)_{r = 0}^{\infty} \)はいかなる2つの自然数\( r_0 \leq r_1 \)に対しても\( P_{p^{r_1} \to p^{r_0}}(a_{r_1}) = a_{r_0} \)を満たすことが分かります。

一般に集合と射影の適切な「列」の組を逆系(inverse system)または射影系(projective system)と呼び、逆系の要素の列であって射影と整合的なものの全体の集合を逆極限と呼びます。特に組\( ( (\mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z})_{r = 0}^{\infty}, (P_{p^{r_1} \to p^{r_0}})_{r_0 \leq r_1}) \)は逆系であり、\( \mathbb{Z}_p \)はその逆極限となります。逆系や逆極限のより正確な定義は次を参照して下さい。

  • 逆極限の定義

さて、これで\( p \)進整数環\( \mathbb{Z}_p \)は定義されました。容易に分かることとして、\( \mathbb{Z}_p \)は和と差と積で閉じています。

命題8(\( \mathbb{Z}_p \)\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)の部分環をなすこと)
\( a \)\( b \)\( p \)進整数とする。この時、\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)での和と差と積について以下が成り立つ。
(1) \( a+b \in \mathbb{Z}_p \)
(2) \( a-b \in \mathbb{Z}_p \)
(3) \( ab \in \mathbb{Z}_p \)

証明

\( a = (a_r)_{r = 0}^{\infty} \)\( b = (b_r)_{r = 0}^{\infty} \)と置く。\( r \in \mathbb{N} \)とする。\( a \)\( b \)\( p \)進整数であることから、\( P_{p^{r+1} \to p^r}(a_{r+1}) = a_r \)かつ\( P_{p^{r+1} \to p^r}(b_{r+1}) = b_r \)である。

(1) \( a+b = (a_r + b_r)_{r = 0}^{\infty} \)である。\( r \in \mathbb{N} \)とする。射影が和を保つことから\( P_{p^{r+1} \to p^r}(a_{r+1} + b_{r+1}) = P_{p^{r+1} \to p^r}(a_{r+1}) + P_{p^{r+1} \to p^r}(b_{r+1}) = a_r + b_r \)である。以上より、\( a+b \in \mathbb{Z}_p \)である。

(2) \( a-b = (a_r - b_r)_{r = 0}^{\infty} \)である。\( r \in \mathbb{N} \)とする。射影が差を保つことから\( P_{p^{r+1} \to p^r}(a_{r+1} - b_{r+1}) = P_{p^{r+1} \to p^r}(a_{r+1}) - P_{p^{r+1} \to p^r}(b_{r+1}) = a_r - b_r \)である。以上より、\( a-b \in \mathbb{Z}_p \)である。

(3) \( ab = (a_r b_r)_{r = 0}^{\infty} \)である。\( r \in \mathbb{N} \)とする。射影が積を保つことから\( P_{p^{r+1} \to p^r}(a_{r+1} b_{r+1}) = P_{p^{r+1} \to p^r}(a_{r+1}) P_{p^{r+1} \to p^r}(b_{r+1}) = a_r b_r \)である。以上より、\( ab \in \mathbb{Z}_p \)である。

これにより、\( \mathbb{Z}_p \)にも和と差と積が定義されました。更に\( \mathbb{Z} \)\( \mathbb{Z}_p \)に含まれることが容易に分かります。

演習9(整数が\( p \)進整数であることの証明演習)
単射\( \mathbb{Z} \to \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z}, \ n \mapsto n^{(p)} \)の像が\( \mathbb{Z}_p \)に含まれることを示せ。

これによって単射\( \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}_p, \ n \mapsto n^{(p)} \)が得られ、整数が\( p \)進整数とみなせることが分かりました。元々の単射\( \mathbb{Z} \to \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z}, \ n \mapsto n^{(p)} \)が和と差と積を保つことから、それを制限した単射\( \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}_p, \ n \mapsto n^{(p)} \)もまた和と差と積を保ちます。つまり\( p \)進整数の和と差と積は整数の和と差と積の拡張になっているということが分かります。

ちなみに単射\( \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}_p, \ n \mapsto n^{(p)} \)は全射ではありません。先程挙げた例\( ([r]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \in \prod_{r = 0}^{\infty} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)はそもそも\( \mathbb{Z}_p \)に属していないので整数でない\( p \)進整数の例にはなっておらず、新たに例を考える必要があります。

命題10(整数でない\( p \)進整数の存在)
単射\( \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}_p, \ n \mapsto n^{(p)} \)は全射でない。

整数でない\( p \)進整数の存在を証明する準備として、「\( p \)進数展開」という概念を考えます。ここで、\( p-1 \)以下の自然数のみからなる数列全体の集合を\( p^{\mathbb{N}} \)と置きます。

補題11(\( p \)進整数の\( p \)進数展開の一意存在性)
写像\( p^{\mathbb{N}} \to \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z}, \ (c_r)_{r = 0}^{\infty} \mapsto ([\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)は単射であり、その像は\( \mathbb{Z}_p \)と等しい。

証明

まずは単射性を示す。\( (c_r)_{r = 0}^{\infty} \)\( (d_r)_{r = 0}^{\infty} \)\( p-1 \)以下の自然数のみからなる数列とし、その\( \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)での像\( c \)\( d \)が等しいとする。\( r \)を自然数とする。\( c = d \)であることから、両辺の第\( r \)項目を比較することで\( [\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r} = [\sum_{i = 0}^{r-1} d_i p^i]_{p^r} \)を得る。すなわち\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i \)\( \sum_{i = 0}^{r-1} d_i p^i \)\( p^r \)で割った余りは等しい。ここで、\( 0 \leq \sum_{i = 0}^{r-1} (p-1)p^i = \sum_{i = 0}^{r-1} (p^{i+1} - p^i) = p^r - 1 < p^r \)であることから、\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i \)\( \sum_{i = 0}^{r-1} d_i p^i \)\( p^r \)で割った余りはそれぞれ\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i \)\( \sum_{i = 0}^{r-1} d_i p^i \)自身に他ならず、従って\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i = \sum_{i = 0}^{r-1} d_i p^i \)である。自然数の\( p \)進法表記の一意性から、\( (c_i)_{i = 0}^{r-1} = (d_i)_{i = 0}^{r-1} \)である。以上より、\( (c_r)_{r = 0}^{\infty} = (d_r)_{r = 0}^{\infty} \)である。すなわち写像\( p^{\mathbb{N}} \to \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z}, \ (c_r)_{r = 0}^{\infty} \mapsto ([\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)は単射である。

次に像が\( \mathbb{Z}_p \)であることを示す。\( (c_r)_{r = 0}^{\infty} \)\( p-1 \)以下の自然数のみからなる数列とする。\( r \)を自然数とする。この時、\( P_{p^{r+1} \to p^r}([\sum_{i = 0}^{r} c_i p^i]_{p^{r+1}}) = [\sum_{i = 0}^{r} c_i p^i]_{p^r} = [\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r} \)である。従って\( ([\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \in \mathbb{Z}_p \)である。

逆に\( a \)\( p \)進整数とする。\( a = (a_r)_{r = 0}^{\infty} \)と置く。各\( r \)に対し、\( a_r = [n]_{p^r} \)かつ\( 0 \leq n \leq p^r-1 \)を満たす唯一の自然数\( n \)\( n_r \)と置き、\( n_r \)\( p \)進法表記することで、\( p-1 \)以下の自然数のみからなる長さ\( r \)の唯一の有限数列\( (c_{r,0},c_{r,1},\ldots,c_{r,r-1}) \)を用いて\( n_r = \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r,i} p^i \)と置く。\( r \)を自然数とする。この時、

\[ \left[ \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r,i} p^i \right]_{p^r} = n_r = P_{p^{r+1} \to p^r}(n_{r+1}) = P_{p^{r+1} \to p^r} \left( \left[ \sum_{i = 0}^{r} c_{r+1,i} p^i \right]_{p^{r+1}} \right) = \left[ \sum_{i = 0}^{r} c_{r+1,i} p^i \right]_{p^r} = \left[ \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r+1,i} p^i \right]_{p^r} \]

であることから、\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r,i} p^i \)\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r+1,i} p^i \)\( p^r \)で割った余りは等しい。ここで、\( 0 \leq \sum_{i = 0}^{r-1} (p-1)p^i = \sum_{i = 0}^{r-1} (p^{i+1} - p^i) = p^r - 1 < p^r \)であることから、\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r,i} p^i \)\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r+1,i} p^i \)\( p^r \)で割った余りはそれぞれ\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r,i} p^i \)\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r+1,i} p^i \)自身に他ならず、従って\( \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r,i} p^i = \sum_{i = 0}^{r-1} c_{r+1,i} p^i \)である。自然数の\( p \)進法表記の一意性から、\( (c_{r,i})_{i = 0}^{r-1} = (c_{r+1,i})_{i = 0}^{r-1} \)である。

\( p-1 \)以下の自然数のみからなる数列\( (c_{r,r})_{r = 0}^{\infty} \)\( (c_r)_{r = 0}^{\infty} \)と置く*3。先程までの議論から、いかなる自然数\( r \)に対しても\( (c_i)_{i = 0}^{r-1} = (c_{r,i})_{i = 0}^{r} \)が成り立ち、よって\( a_r = [n_r] = [\sum_{i = 0}^{r-1} c_{r,i} p^i]_{p^r} = [\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r} \)となる。従って\( a = (a_r)_{r = 0}^{\infty} = ([\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)である。

以上より、写像\( p^{\mathbb{N}} \to \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z}, \ (c_r)_{r = 0}^{\infty} \mapsto ([\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)の像は\( \mathbb{Z}_p \)と等しい。

以上により全単射\( p^{\mathbb{N}} \to \mathbb{Z}_p, \ (c_r)_{r = 0}^{\infty} \mapsto ([\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)を得ました。この全単射で\( p \)進整数\( a \)に対応する数列\( (c_r)_{r = 0}^{\infty} \)を用いた表示\( a = ([\sum_{i = 0}^{r-1} c_i p^i]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)\( a \)\( p \)進数展開と呼び、しばしば\( a = \sum_{i = 0}^{\infty} c_i p^i \)のように略記します*2

\( a := ([\sum_{i = 0}^{r-1} p^{2i}]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \in \prod_{r \in \mathbb{N}} \mathbb{Z}/p^r \mathbb{Z} \)と置く。\( p \)進数展開の一意存在性より、\( a \)\( p \)進整数である。\( a \)\( \mathbb{Z} \)の像に属さないことを示す。まず

\begin{eqnarray*} & & (1-p^2)^{(p)} a = ([1-p^2]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \left( \left[ \sum_{i = 0}^{r-1} p^{2i} \right] \right)_{r = 0}^{\infty} = \left( [1-p^2]_{p^r} \left[ \sum_{i = 0}^{r-1} p^{2i} \right]_{p^r} \right)_{r = 0}^{\infty} = \left( \left[ (1-p^2) \sum_{i = 0}^{r-1} p^{2i} \right]_{p^r} \right)_{r = 0}^{\infty} = ([1-p^{2r}]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \\ & = & ([1]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} = 1^{(p)} \end{eqnarray*}

である。\( a = n^{(p)} \)を満たす整数\( n \)が存在すると仮定する。\( 1^{(p)} = (1-p^2)^{(p)}a = (1-p^2)^{(p)} n^{(p)} = ( (1-p^2)n)^{(p)} \)である。従って整数の法\( p \)冪表示の単射性より、\( 1 = (1-p^2)n \)である。\( p \)\( 2 \)以上の自然数であることから、\( \lvert 1 - p^2 \rvert = \lvert 1-p \rvert \ \lvert 1+p \rvert \geq 3 \)であり、これは\( 1 = (1-p^2)n \)に反し矛盾する。従って\( a = n^{(p)} \)を満たす整数\( n \)は存在しない。以上より、単射\( \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}_p, \ n \mapsto n^{(p)} \)は全射でない。

さて、ここまでは\( p \)が一般の\( 2 \)以上の自然数でした。これだけ緩い条件だと、実は積があまり良い性質を持ちません。例えば、\( 0^{(p)} \)でない2つの\( p \)進整数の積が\( 0^{(p)} \)になってしまうということが起こります。そういう事態を避けるために、新たに\( p \)に制約を課していきます。



\( p \)進数体の定義

以下では\( p \)が素数であると仮定します。すると\( p \)進整数の積が良い性質を持つことが分かります。

命題12(\( p \)進整数が整域であること)
\( a \)\( b \)\( 0^{(p)} \)でない\( p \)進整数とする。この時、\( ab \)\( 0^{(p)} \)でない。

証明

\( a = (a_r)_{r = 0}^{\infty} \)\( b = (b_r)_{r = 0}^{\infty} \)と置く。\( a \neq 0^{(p)} \)より、\( a_{r_0} \neq [0]_{p^{r_0}} \)を満たすような自然数\( r_0 \)が存在する。\( b \neq 0^{(p)} \)より、\( b_{r_1} \neq [0]_{p^{r_1}} \)を満たすような自然数\( r_1 \)が存在する。\( r_2 := r_0 + r_1 \)と置く。\( P_{p^{r_2} \to p^{r_0}}([0]_{p^{r_2}}) = [0]_{p^{r_0}} \neq a_{r_0} \)より、\( a_{r_2} \neq [0]_{p^{r_2}} \)である。\( P_{p^{r_2} \to p^{r_1}}([0]_{p^{r_2}}) = [0]_{p^{r_1}} \neq b_{r_1} \)より、\( b_{r_2} \neq [0]_{p^{r_2}} \)である。整数\( n_0 \)\( n_1 \)を用いて\( a_{r_2} = [n_0]_{p^{r_2}}, b_{r_2} = [n_1]_{p^{r^2}} \)と置く。\( [0]_{p^{r_0}} \neq a_{r_0} = P_{p^{r_2} \to p^{r_0}}(a_{r_2}) = P_{p^{r_2} \to p^{r_0}}([n_0]_{p^{r_2}}) = [n_0]_{p^{r_0}} \)より、\( n_0 \)\( p^{r_0} \)の倍数でない。\( [0]_{p^{r_1}} \neq b_{r_1} = P_{p^{r_2} \to p^{r_1}}(b_{r_1}) = P_{p^{r_2} \to p^{r_1}}([n_1]_{p^{r_2}}) = [n_1]_{p^{r_1}} \)より、\( n_1 \)\( p^{r_1} \)の倍数でない。

\( p \)が素数であり、\( n_0 \)\( p^{r_0} \)の倍数でなく、\( n_1 \)\( p^{r_1} \)の倍数でないことから、\( n_0 n_1 \)\( p^{r_0 + r_1} = p^{r_2} \)の倍数でない。すなわち\( a_{r_2} b_{r_2} = [n_0]_{p^{r_2}} [n_1]_{p^{r_2}} = [n_0 n_1]_{p^{r_2}} \neq [0]_{p^{r_2}} \)である。特に、\( ab = (a_r b_r)_{r = 0}^{\infty} \neq 0^{(p)} \)である。

このように\( 0^{(p)} \)でないという性質が積で保たれることから、分母に\( 0^{(p)} \)以外の数を許容する分数を考えることが出来ます。

定義13(\( p \)進数の定義)
\( p \)進整数の分数であって分母が\( 0^{(p)} \)でないものを、\( p \)進数と呼ぶ。\( p \)進数の全体の集合を\( \mathbb{Q}_p \)と書き、\( p \)進数体と呼ぶ。

そもそも分数とは何かが気になる人は、次を参照して下さい。

  • \( p \)進数の定義 その1(逆極限の商体)

以上で\( p \)進数を定義することが出来ました。\( p \)進数であって\( p \)進整数でないものの典型は\( \frac{1}{p} \)であり、実は全ての\( p \)進数は\( p \)進整数\( a \)と自然数\( r \)を用いて\( \frac{a}{p^r} \)と表せます。これらについての証明はここではしないことにして、別の定式化に回して証明していくことにします。

さて、整数が\( p \)進整数とみなせたことから、整数の分数である有理数も\( p \)進数とみなせるということが分かります。すなわち、有理数\( q \)を整数\( n \)\( 0{} \)でない整数\( m \)を用いて\( \frac{n}{m} \)と表した時の\( p \)進数\( \frac{n^{(p)}}{m^{(p)}} \)\( q \)の代表元の取り方によらず、写像\( \mathbb{Q} \to \mathbb{Q}_p, \ \frac{n}{m} \mapsto \frac{n^{(p)}}{m^{(p)}} \)が定まります。この写像が和と差と積を保つことも容易に確かめられます。それでは\( p \)進数であって有理数でないものの例を見ていきましょう。

命題14(\( p \)進無理数の存在)
写像\( \mathbb{Q} \to \mathbb{Q}_p, \ \frac{n}{m} \to \frac{n^{(p)}}{m^{(p)}} \)は単射でありかつ全射でない。

証明

まずは単射であることを示す。\( q_0 \)\( q_1 \)を有理数とし、その\( \mathbb{Q}_p \)での像が等しいとする。整数\( n_0 \)\( n_1 \)\( 0{} \)でない整数\( m_0 \)\( m_1 \)を用いて\( q_0 = \frac{n_0}{m_0}, q_1 = \frac{n_1}{m_1} \)と置く。この時、\( \frac{n_0^{(p)}}{m_0^{(p)}} = \frac{n_1^{(p)}}{m_1^{(p)}} \)であるので、両辺に\( m_0^{(p)} m_1^{(p)} \)を掛けて\( n_0^{(p)} m_1^{(p)} = n_1^{(p)} m_0^{(p)} \)となる。すなわち\( (n_0 m_1)^{(p)} = (n_1 m_0)^{(p)} \)である。従って整数の法\( p \)冪表示の単射性より、\( n_0 m_1 = n_1 m_0 \)である。よって\( q_0 = \frac{n_0}{m_0} = \frac{n_1}{m_1} = q_1 \)である。以上より写像\( \mathbb{Q} \to \mathbb{Q}_p, \ \frac{n}{m} \to \frac{n^{(p)}}{m^{(p)}} \)は単射である。

次に全射でないことを示す。\( a := ([\sum_{i = 0}^{r-1} p^{i^2}]_{p^r})_{r = 0}^{\infty} \)と置く。\( p \)進数展開の一意存在性から、\( a \)\( p \)進整数である。\( a \)が有理数の像でないことを示す*4。有理数\( q \)\( \mathbb{Q}_p \)での像が\( a \)と等しいと仮定する。整数\( n \)と正の整数\( m \)を用いて\( q = \frac{n}{m} \)と置く。仮定より、\( a = \frac{n^{(p)}}{m^{(p)}} \)であり、両辺に\( m^{(p)} \)を掛けて\( m^{(p)} a = n^{(p)} \)を得る。すなわち\( m^{(p)} a - n^{(p)} = 0^{(p)} \)である。

\( \lim_{r \to \infty} (r+1)^2 - r^2 = \lim_{r \to \infty} 2r + 1 = \infty \)より、\( m < p^{(r+1)^2 - r^2 - 1} \)かつ\( \lvert n \rvert < p^{r^2 - 1} \)を満たすような正の自然数\( r \)が存在する。この時\( a \)の第\( (r+1)^2 \)項目は\( [\sum_{i = 0}^{(r+1)^2-1} p^{i^2}]_{p^{(r+1)^2}} = [\sum_{i = 0}^{r} p^{i^2}]_{p^{(r+1)^2}} \)であるので、\( m^{(p)} a \)の第\( (r+1)^2 \)項目は

\[ [m]_{p^{(r+1)^2}} \left[ \sum_{i = 0}^{r} p^{i^2} \right]_{p^{(r+1)^2}} = \left[ m \sum_{i = 0}^{r} p^{i^2} \right]_{p^{(r+1)^2}} \]

である。ここで、\( r \geq 1 \)より

\[ p^{r^2} < \sum_{i = 0}^{r} p^{i^2} \leq \sum_{i = 0}^{r^2} p^i \leq \sum_{i = 0}^{r^2} (p-1)p^i = \sum_{i = 0}^{r^2} (p^{i+1} - p^i) = p^{r^2+1} - 1 < p^{r^2+1} \]

であり、従って

\[ p^{r^2} \leq m p^{r^2} < m \sum_{i = 0}^{r} p^{i^2} < m p^{r^2+1} \leq p^{(r+1)^2 - 1} \]

である。\( r \geq 1 \)かつ\( \lvert n \rvert < p^{r^2 - 1} \)より

\[ 1 \leq p^{r^2} - p^{r^2 - 1} < p^{r^2} - n < \left( m \sum_{i = 0}^{r} p^{i^2} \right) - n < \left( m \sum_{i = 0}^{r} p^{i^2} \right) + p^{r^2 - 1} \leq p^{(r+1)^2 - 1} + p^{r^2 - 1} < 2p^{(r+1)^2-1} \leq p^{(r+1)^2} \]

となり、これは\( m^{(p)} a - n^{(p)} = 0^{(p)} \)の第\( r^2 \)項目\( [(m \sum_{i = 0}^{r} p^{i^2}) - n]_{p^{r^2}} \)\( [0]_{p^{r^2}} \)であることに反し矛盾する。以上より、\( a \)は有理数の像でない。従って写像\( \mathbb{Q} \to \mathbb{Q}_p, \ \frac{n}{m} \to \frac{n^{(p)}}{m^{(p)}} \)は全射でない。

さて、引き続き\( p \)進数の他の定式化も見ていきます。そして今回の定義と等価であることを確認していきましょう。

  • 定式化2 \( p \)進的に収束する数列
  • 定式化3 \( p \)進法と\( p \)進数展開
  • 章末問題1



*1 ただし&mathjax{[0]_1 = [1]_1 = [2]_1 = \cdots};が成り立ちます。
*2 この無限和の表示は後に極限を定義することでも正当化されます。
*3 このように添字が二重な数列の対角成分を用いて新たな数列を作る操作を総じて対角線論法と言います。
*4 実際にははじめにの[[有理数に対応する&mathjax{p};進数の特徴付け>有理数とp進数の関係#characterisation]]で述べたことから、&mathjax{p};進数展開が循環数列で与えられないような&mathjax{p};進整数は有理数の像にはなりません。ですがはじめにでの&mathjax{p};進数の定式化とここでの&mathjax{p};進数の定式化は異なり、まだ2つの定式化が等価であることを示していないので、ここではその事実を使うことは出来ません。