整数とp進整数の関係

Last-modified: Sun, 25 Dec 2016 17:07:16 JST (1805d)
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ここまでで、「\( p \)進法表記によって自然数が\( p \)進数とみなせること」と「\( p \)進数には足し算と掛け算が定義できるということ」と「自然数は\( p \)進数と思って足し算や掛け算を計算しても自然数と思って足し算や掛け算を計算しても同じ値になるということ」を説明しました。更に、\( p \)進数は実数と同様に、有理数を含む概念であることを説明しようと思います。それは即ち、各有理数\( r \)に対して、\( r \)\( p \)進法表記\( r^{(p)} \)を、右に無限桁の小数ではなく左に無限桁の小数として定義するということです。

有理数を実数とみなすと、その\( p \)進法表記は右に無限桁の小数として表されますが、\( p \)進数とみなす場合は、左に無限桁の小数として表すことになります。つまり、実数と見ているか\( p \)進数と見ているかによって、有理数は2種類の\( p \)進法表記を持つということに注意しましょう。この事情は自然数の場合でも同様でした。例えば自然数\( 1 \)実数と思って右に無限桁の小数で表示すると\( 1.0000000000 \cdots_{(p)} \)となりますが、\( p \)進数と思って左に無限桁の小数で表示すると\( \cdots 0000000001_{(p)} \)となるので、同じ\( 1 \)でも2種類の\( p \)進法表記を持っていることになります。自然数や分母が\( p \)の冪乗であるような正の有理数は、この2種類の\( p \)進法表記が(あってもなくても意味のない\( 0{} \)を省略すれば)一致しますが、負の整数や分母が複雑な有理数は、2種類の\( p \)進法表記が全く異なる見た目をすることになります。

しかし「左に無限桁の小数で表せる数」として\( p \)進数を定義している今、有理数が\( p \)進数とみなせることを直接証明するのは少し大変なので、今回はまず(負かもしれない)整数が\( p \)進数とみなせることを観察しましょう*1。そのために、負の整数\( -n \)に対して、その\( p \)進法表記である\( (-n)^{(p)} \)という\( p \)進数を定義します(ここまでの説明では\( m^{(p)} \)という\( p \)進数は\( m \)が自然数の場合にしか定義されていなかったことに注意して下さい)。\( (-n)^{(p)} \)を定義する、とは言っても好き勝手に定義してしまってはあまり意味がありません。等式\( (-n) + n = 0 \)が成り立つことを念頭に置き、この関係を崩さないように\( (-n)^{(p)} \)を定義することにします。つまり、既に定義されている\( n^{(p)} \)\( 0^{(p)} \)を用いて表される等式\( x + n^{(p)} = 0^{(p)} \)を満たすような\( p \)進数\( x \)を探し出し、そのような\( x \)\( (-n)^{(p)} \)の定義に採用します。そうすることで、自然な等式\( (-n)^{(p)} + n^{(p)} = 0^{(p)} \)が保証されます。

簡単な例として、\( n = 1 \)の場合を見てみましょう。文字を書く手間を省くため、\( p-1 \)のことを一旦\( u \)と置きます。すると、\( \cdots uuuuuuuuuu_{(p)} \)という\( p \)進数が定まります(つまり、\( p = 2 \)の場合は\( \cdots 11111111111_{(2)} \)のことで、\( p = 3 \)の場合は\( \cdots 2222222222_{(3)} \)のことです)。では、\( (\cdots uuuuuuuuuu_{(p)}) + (\cdots 0000000001_{(p)}) \)を計算してみましょう。\( p \)進数における足し算は、その定義から、筆算により右の桁から順に計算でき、

\begin{eqnarray*} & & \begin{array}{cccccccccccc} & \cdots & u & u & u & u & u & u & u & u & u & \textcolor{blue}{u}_{(p)} \\ + & \cdots & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & \textcolor{blue}{1}_{(p)} \\ \hline & & & & & & & & & & {}^{\textcolor{blue}{1}} & \textcolor{blue}{0}_{(p)} \end{array} \hspace{0.1in} \to \hspace{0.1in} \begin{array}{cccccccccccc} & \cdots & u & u & u & u & u & u & u & u & \textcolor{blue}{u} & u_{(p)} \\ + & \cdots & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & \textcolor{blue}{0} & 1_{(p)} \\ \hline & & & & & & & & & {}^{\textcolor{blue}{1}} & \textcolor{blue}{0} & 0_{(p)} \end{array} \\ \\ & \to & \begin{array}{cccccccccccc} & \cdots & u & u & u & u & u & u & u & \textcolor{blue}{u} & u & u_{(p)} \\ + & \cdots & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & \textcolor{blue}{0} & 0 & 1_{(p)} \\ \hline & & & & & & & & {}^{\textcolor{blue}{1}} & \textcolor{blue}{0} & 0 & 0_{(p)} \end{array} \hspace{0.1in} \to \hspace{0.1in} \begin{array}{cccccccccccc} & \cdots & u & u & u & u & u & u & \textcolor{blue}{u} & u & u & u_{(p)} \\ + & \cdots & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & \textcolor{blue}{0} & 0 & 0 & 1_{(p)} \\ \hline & & & & & & & {}^{\textcolor{blue}{1}} & \textcolor{blue}{0} & 0 & 0 & 0_{(p)} \end{array} \\ \\ & \vdots & \\ \\ & \to & \begin{array}{cccccccccccc} & \cdots & u & u & u & u & u & u & u & u & u & u_{(p)} \\ + & \cdots & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1_{(p)} \\ \hline & \cdots & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0_{(p)} \end{array} \end{eqnarray*}

となります。つまり、\( (\cdots uuuuuuuuuu_{(p)}) + 1^{(p)} = 0^{(p)} \)となります。逆に、等式\( x + 1^{(p)} = 0^{(p)} \)を満たすような\( p \)進数\( x \)は、以下の計算によって\( \cdots uuuuuuuuuu_{(p)} \)に限ることが確かめられます*2

\begin{eqnarray*} x & = & 0^{(p)} + x = ((\cdots uuuuuuuuuu_{(p)}) + 1^{(p)}) + x = (\cdots uuuuuuuuuu_{(p)}) + (1^{(p)} + x) = (\cdots uuuuuuuuuu_{(p)}) + (x + 1^{(p)}) \\ \\ & = & (\cdots uuuuuuuuuu_{(p)}) + 0^{(p)} = \cdots uuuuuuuuuu_{(p)} \end{eqnarray*}

以上の事情により、\( \cdots uuuuuuuuuu_{(p)} \)\( -1 \)\( p \)進法表記\( (-1)^{(p)} \)と定めることにします。

ここで、\( n = 1 \)とは限らない一般の状況を考えるために、\( p \)進数\( a \)に対して\( ((-1)^{(p)} \times a) + a \)を計算してみましょう。既に確かめた等式\( (-1)^{(p)} + 1^{(p)} = 0^{(p)} \)を用いて計算すると*3

\begin{eqnarray*} ((-1)^{(p)} \times a) + a = ((-1)^{(p)} \times a) + (1^{(p)} \times a) = ((-1)^{(p)} + 1^{(p)}) \times a = 0^{(p)} \times a = 0^{(p)} \end{eqnarray*}

となることが分かります。逆に、等式\( x + a = 0^{(p)} \)を満たすような\( p \)進数\( x \)は、以下の計算によって\( (-1)^{(p)} \times a \)に限ることが確かめられます。

\begin{eqnarray*} x & = & 0^{p} + x = (((-1)^{(p)} \times a) + a) + x = ((-1)^{(p)} \times a) + (a + x) = ((-1)^{(p)} \times a) + (x + a) = ((-1)^{(p)} \times a) + 0^{(p)} \\ \\ & = & (-1)^{(p)} \times a \end{eqnarray*}

特に\( a = n^{(p)} \)の場合を考えることにより、\( x = (-1)^{(p)} \times n^{(p)} \)は等式\( x + n^{(p)} = 0^{(p)} \)を満たすただ1つの\( p \)進数であることが分かります。以上の事情により、\( (-1)^{(p)} \times n^{(p)} \)\( -n \)\( p \)進法表記\( (-n)^{(p)} \)と定めることにします*4以上により、整数を\( p \)進数とみなせることが確認できました。ただ、この構成だけだと実際に負の整数がどのような\( p \)進法表記を持つかが具体的には分かりづらいので、演習問題として実際に計算してみるとイメージが付くと思います。

演習1(整数の\( p \)進法表記の演習)
(1) \( (-2)^{(p)} \)を計算せよ*5
(2) いかなる整数\( n \)に対しても、\( n^{(p)} \)は途中から各桁が同じ値になる(つまり周期1で循環する)ことを確かめよ*6

ちなみに小数点を持たない(または小数部分の各桁に\( 0{} \)のみしか現れない)\( p \)進数のことを、\( p \)進整数と呼びます。\( p \)進整数の足し算や掛け算で得られる値もまた\( p \)進整数であることが容易に確認できます。自然数はその\( p \)進法表記の定義から\( p \)進整数であり、\( (-1)^{(p)} = \cdots uuuuuuuuuu_{(p)} \)\( p \)進整数であることから、全ての整数が\( p \)進整数であることが分かります。つまり、\( p \)進整数は整数を含む概念であるということが分かります。筆算を用いた演算の定義と\( (-1)_{(p)} \)の性質から、\( p \)進整数の足し算や掛け算は、整数の足し算や掛け算の拡張になっているということも分かります。では、次に掛け算の逆演算である「逆数」について考えていきましょう。そこで初めて、小数部分のある、つまり\( p \)進整数でないような、\( p \)進数が必要となります。




*1 後に&mathjax{p};進数の概念を定義し直しますが、その定義においては非常に簡単に証明することができます。その点だけを見ても、環論や位相空間論という一般論を用いて有理数や&mathjax{p};進数を扱うことの利点が分かります。
*2 3回目の式変形でカッコが付く位置が変わったり、4回目の式変形で足し算の順番が変わったりしましたが、これらの式変形が可能であるという性質をそれぞれ結合律可換性と呼びます。&mathjax{p};進数の足し算は結合律と可換性が成り立ちますが、その証明は今の位取り記法を用いた&mathjax{p};進数の定義だとやや面倒なので、後に位取り記法を用いずに&mathjax{p};進数の概念を定義し直した上で証明します。
*3 -1)^{(p)} \times a) + a};を計算してみましょう。既に確かめた等式&mathjax{(-1)^{(p)} + 1^{(p)} = 0^{(p)}};を用いて計算すると((2回目の式変形で掛け算の右側をくくって左側を和の形に直しましたが、このような式変形が可能であることを分配律と呼びます。&mathjax{p};進数の足し算と掛け算の組み合わせは分配律が成り立ちますが、その証明は今の位取り記法を用いた&mathjax{p};進数の定義だとやや面倒なので、後に位取り記法を用いずに&mathjax{p};進数の概念を定義し直した上で証明します。
*4 &mathjax{n = 1};の場合は既に&mathjax{(-1)^{(p)}};が定義されていましたが、2つの定義は同じ値を与えることに注意して下さい。実際、どちらの定義でも&mathjax{(-1)^{(p)}};は等式&mathjax{x + 1^{(p)} = 0^{(p)}};を満たす唯一の&mathjax{p};進数&mathjax{x};のことでした。
*5 ヒント:&mathjax{p = 2};の場合と&mathjax{p > 2};の場合で場合分けをし、後者の場合は&mathjax{p-2};を文字&mathjax{v};などで置き、&mathjax{u};と&mathjax{v};で&mathjax{(-2)^{(p)}};を表しましょう。
*6 ヒント:&mathjax{n \geq 0};の場合と&mathjax{n < 0};の場合とで場合分けをし、後者の場合は&mathjax{n = -m};と置いて、&mathjax{n^{(p)} = (-m)^{(p)}};の定義&mathjax{(-1)^{(p)} \times m^{(p)}};に戻るのではなく等式&mathjax{(-m)^{(p)} + m^{(p)} = 0^{(p)}};から逆算してみましょう。