準備4 数学的言葉使いのまとめ

Last-modified: Sat, 13 May 2017 17:56:39 JST (1666d)
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ここでは「日常生活での言葉使いと少し異なる数学的言葉使い」や「日常生活ではあまり聞かないけれど数学ではよく聞く言葉使い」を簡単にまとめておきます。


  • ある
    用法ある\( x \)が存在して、~である。
    意味~を満たすような\( x \)が存在する。


  • 一意である
    用法~を満たす\( x \)は一意である。
    意味~を満たすような\( x \)は2つ以上存在しない。
    注意1つも存在しなくても良い。

  • 一意に存在する
    用法~を満たす\( x \)が一意に存在する。
    意味~を満たすような\( x \)がちょうど1つだけ存在する。

  • 一般に
    用法このような\( x \)は一般に~でない。
    意味(1) このような\( x \)は~になりえない。
    (2) このような\( x \)は必ずしも~でない。


  • 数えられる
    用法集合\( x \)は数えられる。
    意味集合\( x \)は自然数の集合\( \mathbb{N} \)からの全射を持つ。
    注意有限とは限らない。仮に有限であるとしても、毎秒\( 100^{100} \)個の要素を宇宙年齢と同じ長さの時間だけ唱え続けても数え終わる保証はない。


  • 用法\( x \)は集合\( X \)の元である。
    意味\( x \)は集合\( X \)の要素である。


  • 公理
    用法…であることを公理として課す。
    意味(1) 何かの数学的概念に課している場合は、…であることをその定義に含める*1
    (2) 何かの数学概念に課しているわけではない場合は、…であることを仮定なく帰結することを許容する論理体系を考える。


  • 従う
    用法~であることは…であることから従う。
    意味~であることの理由は、…であるからである。

  • 示す
    用法~であることを示す。
    意味~であることを証明する。


  • 自明である
    用法~は自明である。
    意味(1) ~が「代数的構造を与えられている集合の要素」である場合は、~はその代数的構造の特定の演算に関する単位元である。
    (2) ~が「代数的構造を与えられている集合」である場合は、その代数的構造を与えられている集合への~からの準同型がちょうど1つ存在する。
    (3) ~が命題の主張や議論である場合は、~はトートロジーに類する明白な換言によって演繹できる。
    注意3つ目の用法は、「自分には説明をする能力がない」や「明らかだと認識してはいるのだけれど厳密に書くことは出来ない」という意味ではない。また著者によってトートロジーに類する明白な換言の範疇が異なるので、読者にとっては自明でないこともある。

  • 自明な
    用法\( x \)は自明な~である。
    意味(1) ~が方程式の解や根の場合は、\( x \)が方程式の定義から明白な解や根である。
    (2) ~が加群や線形空間のような代数的構造である場合は、\( x \)から他の~への準同型がちょうど1つだけ存在する。
    注意後者は\( x \)に考えている代数的構造が何であるかに依存した表現である。ここでの代数的構造とは演算とそれに課される公理の組である。例えば半群と群、環と体はそれぞれ演算の構造が同じでも公理が異なるため、相異なる代数的構造である。自明な半群は台集合が空集合だが自明な群は台集合が1点集合であり、自明な「零環を許容する環」はは零環だが自明な「零環を許容しない環」は整数環\( \mathbb{Z} \)と同型であり、自明な体は存在せず自明な「標数\( 0{} \)の体」は有理数体\( \mathbb{Q} \)と同型である。

  • 自由に
    用法集合\( x \)が自由に生成する~を…と置く。
    意味集合\( x \)からの単射が与えられている~(代数的構造)であって、\( x \)が~としての生成系をなし、かつ最小限の関係式しか成立しない(多くの場合具体的な構成を持つ)ものを…と置く。
    注意この自由は「(余計な関係式)を持たない」という意味のfreeの訳語であり、「好き勝手に」という意味ではない。

  • 十分大きな
    用法十分大きな\( x \)に対して、~である。
    意味\( x > N \)を満たすいかなる\( x \)に対しても~が成り立つような、定数\( N \)が存在する。

  • 十分小さな
    用法十分小さな\( x > 0 \)に対して、~である。
    意味\( 0 < x < \epsilon \)を満たすいかなる\( x \)に対しても~が成り立つような、正の定数\( \epsilon \)が存在する。


  • ただ1つの
    用法ただ1つの\( x \)が存在して、~である。
    意味~を満たすような\( x \)がちょうど1つだけ存在する。
    注意一意に存在することと同義。


  • 特に
    用法~は…である。特に、○○である。
    意味~は…である。…であることは○○であることを保証するので、~は○○でもある。

  • とする
    用法\( x \in X \)とする。
    意味(1) \( x \)が現文脈中で既出である場合は、新たに仮定として\( x \in X \)を課す。
    (2) \( x \)が現文脈中で既出でない場合は、\( x \)を変数の記号として\( x \in X \)と仮定する。
    注意後者の用法は主に\( \forall x \in X, \Phi \)の形の論理式を証明する場合に用いる。その代わりに「任意の\( x \in X \)に対して、~であり、…である。よって○○であり、従って\( \Phi \)である」という言葉使いをすることもあるが、「任意の\( x \)に対し」という量化がどの句読点まで生きているのか明確でなく、かつ\( \forall \)導入則の適用を直接は翻訳していないという事情から好まれないこともある。後者の用法も量化の範囲は明確とは限らないが文を一度切っているためにある程度は明確化しやすく、また\( \forall \)導入則の適用を直接翻訳した証明になる。


  • ならば
    用法~であるならば…である。
    意味~でないか…であるかの少なくとも一方が成り立つ。
    注意両方が成り立っても良い。


  • 任意の
    用法任意の\( x \)に対して、~である。
    意味いかなる\( x \)に対しても、~が成り立つ。


  • 非可換
    用法\( x \)は非可換~である。
    意味(1) \( x \)は可換でない~である。
    (2) \( x \)は可換とは限らない~である。
    注意文脈によっては可換な場合もある。

  • 非自明
    用法~は非自明である。
    意味(1) ~が「代数的構造を与えられている集合の要素」である場合は、~はその代数的構造の特定の演算に関する単位元でない。
    (2) ~が「代数的構造を与えられている集合」である場合は、その代数的構造を持つ集合であって「~からそこへの準同型が1つも存在しないかまたは2つ以上存在する」ようなものが存在する。
    (2) ~が命題の主張や議論である場合は、トートロジーに類する明白な換言では~を証明することが出来ない。
    注意自明である」の項目を参照。


  • または
    用法~であるまたは…である。
    意味~であるか…であるかの少なくとも一方は成り立つ。
    注意両方が成り立っても良い。


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*1 ある意味で(1)は(2)の特別な場合とみなすことも出来ます。