点列の定義

Last-modified: Fri, 28 Apr 2017 11:45:31 JST (1681d)
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それでは写像を用いて「点列」という概念を定義します。

定義1(点列の定義
\( X \)をクラスとする。\( n \in \mathbb{N} \)に対し、\( X \)の長さ\( n \)の有限列または\( X \)の元を\( n \)個並べたものとはクラス関数\( n \to X \)のことである。\( X \)の点列*1または\( X \)の元を可算無限個並べたものとはクラス関数\( \mathbb{N} \to X \)のことである。

\( X \)の長さ\( 0{} \)の有限列は写像\( \emptyset \to X \)に他ならず、それは包含写像に限り*2、すなわちいわゆる空列となります。

\( X \)の長さ\( 1 \)の有限列は写像\( \{ 0 \} \to X \)のことに他ならず、\( \{ 0 \} \)は元を1つしか持たないので、\( X \)の元を\( 1 \)個並べたものを与えることと\( X \)の元を1つ与えることは等価になります*3。従って、\( X \)の元を\( 1 \)個並べたもの\( a \colon \{ 0 \} \to X, \ 0 \mapsto a_0 \)のことを\( a_0 \)\( (a_0) \)と書くことがあります。\( a_0 \)\( a \)は集合としては異なりますが、互いに構成し合えるという点で等価であるので表記の上では区別しないということです。記号の濫用になりますが、あまり混乱が生じることはありません。

一般に、\( X \)の長さ\( n \)の有限列\( a \colon n \to X, \ i \mapsto a_i \)\( (a_i)_{i \in n} \)のように表記します*4。特に\( 2 \leq n \leq 6 \)の時*5、以下のような表記をすることもあります。

\( n=2 \)の時)\( (a_0,a_1) \)
\( n=3 \)の時)\( (a_0,a_1,a_2) \)
\( n=4 \)の時)\( (a_0,a_1,a_2,a_3) \)
\( n=5 \)の時)\( (a_0,a_1,a_2,a_3,a_4) \)
\( n=6 \)の時)\( (a_0,a_1,a_2,a_3,a_4,a_6) \)

この表記はクラスの組や3つ組等の表記と同じであり記号の濫用になってしまいますが、\( X^2 \)\( X \times X \)\( X^3 \)\( X \times X \times X \)\( X^4 \)\( X \times X \times X \times X \)\( X^5 \)\( X \times X \times X \times X \times X \)\( X^6 \)\( X \times X \times X \times X \times X \times X \)の間にはそれぞれ標準的な全単射があり*6、双方に同じような役割を与えることが多いため、結果的に記号の濫用による混乱が生じることは殆どありません。

同様に、\( X \)の点列\( a \colon \mathbb{N} \to X, \ i \mapsto a_i \)のことを\( (a_i)_{i \in \mathbb{N}} \)\( (a_i)_{i = 0}^{\infty} \)のように表記します。

\( X \)が「数の集まり」である時、\( X \)の点列のことを数列と呼ぶことがあります。ただし数の集まりという概念を定義するには「数」という概念を定義する必要がありますが、何をもって数と呼ぶかは人それぞれです*7。自然数はもちろん、これから定義していく整数や有理数や\( p \)進整数や\( p \)進数、更にはそれより広い数学的対象を数と呼ぶことがありますので、数列という用語はかなり多義的なものです。いずれにしても点列はそのいかなる数列の意味も内包しているので、数列について考えるためには点列を考えれば十分ということになります。

有限列や点列は数学の様々な分野で頻繁に用いられる重要な概念です。例えば解析では\( \epsilon \)-\( \delta \)論法を学ぶ最初の方で「コーシー列」という点列概念を導入しますし、線形代数でおなじみの「線形空間*8」も有限列によって具体例が与えられます。もちろんこれらの例は非常に具体的であるため公理的集合論の中で写像概念を用いて抽象的に実現するありがたさが感じにくいかもしれませんが、それは初等的な解析や線形代数がトートロジーに初等的なだけであって、実際にはより複雑な数学の中で抽象的な点列概念が山程現れます。点列を用いた抽象的な議論の例として、例えば以下を参照して下さい。

さて、\( X \)が集合とは限らない場合、\( X \)の元を\( n \)個もしくは可算無限個並べたものが集合になるとは限らないので、それらの全体がなすクラスが意味を持ちません。しかし\( X \)が集合である場合、\( X \)の点列等は集合になるので、それらの全体がなすクラスを定義することが出来ます。

定義2(コピーの直積の定義)
\( X \)\( N \)を集合とする。写像\( N \to X \)の全体のなす集合*9\( X^N \)または\( {}^N X \)または\( \textrm{Map}(N,X) \)と置き、\( X \)\( N \)個直積または\( X \)のコピー\( N \)個の直積と呼ぶ。

定義から、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対して\( X^n \)\( X \)の元を\( n \)個並べたもの全体の集合となり、また\( X^{\mathbb{N}} \)\( X \)の元を可算無限個並べたもの全体の集合となります。従ってこのコピーの直積という概念は、点列の集合を一般化したものと考えることが出来ます。そのため、\( X^N \)の元である写像\( a \colon N \to X, \ i \mapsto a_i \)のことを点列の表記と同様に\( (a_i)_{i \in N} \)と書くことがあります。特に\( N \)がある\( n \in N \)を用いて\( \mathbb{N} \setminus n \)と表せる時は\( a \)\( (a_i)_{i = n}^{\infty} \)と表記します*10

コピーの直積という概念は、より一般化した「集合族の直積」という概念に内包されます。集合族の直積については後回しにして、それでは点列を構成する強力な道具である「漸化式」を導入します。




*1 人によっては点列でより広い概念を指すことがあります。
*2 cf. 章末問題3
*3 cf. 章末問題3
*4 または後に定義される&mathjax{n-1};という集合を用いて&mathjax{(a_i)_{i = 0}^{n-1}};と表記します。
*5 &mathjax{6};という数字に意味はありませんが、[[Encyclopedia of &mathjax{P};-adic Numbers>FrontPage]]では&mathjax{6};まで定義しておけば十分です。
*6 cf. 章末問題3
*7 cf. 位取り記法の復習
*8 ベクトル空間とも呼びます。
*9 そのクラスは実際に&mathjax{\{ a \in P(N \times X) \mid \forall n \in N, \exists ! x \in X, (n,x) \in a \}};と表せるので、確かに集合をなします。
*10 &mathjax{N};がある&mathjax{n \in \mathbb{N}};とある&mathjax{m \in n \setminus \{ n \}};を用いて&mathjax{n \setminus m};と表せる時は、後に定義される&mathjax{n-1};という集合を用いて&mathjax{a};を&mathjax{(a_i)_{i = m}^{n-1}};と表記します。