空集合の存在

Last-modified: Mon, 01 May 2017 20:54:18 JST (1678d)
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ここまででクラスが豊富に存在することと、集合でないようなクラスが存在することが証明されました。しかし、現在課されている公理だけでは集合の存在が原理的に証明出来ません。そこで、集合の存在を保証する公理を1つ課そうと思います。その前に、「空集合」という概念を導入し、その声質を調べます。

定義1(空集合の定義
クラス\( A \)空(empty)であるとは、任意の集合\( x \)に対し\( x \notin A \)が成り立つということである。空である集合を空集合(empty set)と呼ぶ。

空クラスには、以下のようにして一意性が確認されます。

定理2(空クラスの一意性定理)
2つの任意のクラス\( A \)\( B \)に対し、\( A \)が空でありかつ\( B \)が空であるならば、\( A = B \)である。

定理2を証明するために、次の補題を用意します。

補題3(空クラスが任意のクラスに含まれること)
2つの任意のクラス\( C \)\( D \)に対し、\( C \)が空であるならば、\( C \subset D \)である。

証明

\( c \in C \)とする*2\( C \)は空集合であるので、\( c \notin C \)である。従って\( (c \in C) \wedge (c \notin C) \)となり、演繹規則の例(5)により矛盾記号\( \perp \)が帰結される。従って、演繹規則の例(6)により\( c \in D \)となる。以上より、\( C \subset D \)である。

外延性公理包含関係の定義より、\( A \subset B \)かつ\( B \subset A \)を証明すれば良い。空集合が任意のクラスに含まれることから、\( A \subset B \)を得る。空集合が任意のクラスに含まれることから、\( B \subset A \)を得る*3。以上より、\( A = B \)である。

それでは、空集合の存在を公理として課します。

公理4(空集合の存在公理)
あるクラス\( \emptyset \)が存在し、\( \emptyset \)は空集合である。

空集合の存在公理で存在が保証されるクラスは空集合の一意性定理によりただ1つであるため、\( \emptyset \)という記号でそのまま唯一の空集合を表す*1ことにします。\( \emptyset \)は空集合であり、空集合の定義から\( \emptyset \)は集合をなします。空クラスが任意のクラスに含まれることから、\( \emptyset \)は全てのクラスの部分集合であることが分かります。また空クラスの一意性定理集合であることの等号不変性により、空クラス\( \{ x \mid x \neq x \} \)\( \{ x \mid \perp \} \)もまた集合となり、特に空集合となります。




*1 正確には、これも集合の外延的記法と同様の略記を導入していることになります。つまり論理式&mathjax{x \in \emptyset};は&mathjax{\forall A ( ( (\exists X (A \in X) ) \wedge (\forall x (x \notin A) ) ) \to (x \in A) )};を表し、論理式&mathjax{\emptyset \in x};は&mathjax{\forall A ( ( (\exists X (A \in X) ) \wedge (\forall x (x \notin A) ) ) \to (A \in x) )};表します。そして&mathjax{\emptyset};を用いた議論は、これらの略記に[[空集合の一意性定理>#uniqueness]]と[[空集合の存在公理>#existence]]を組み合わせて各種演繹規則を適用したものとなります。
*2 述語論理の証明に慣れないうちは、空集合から元が取れないのでおかしな証明だと思う人が多いと思います。そもそもの証明の定義や、更には論理式の定義に戻って確認してみましょう。cf. 述語論理
*3 主観が混ざりやすい「文字の対称性より」という定型句を、記号的に厳密に翻訳する典型的な方法です。これにより主観性が排除されています。