自然数の引き算の定義

Last-modified: Thu, 12 Jan 2017 22:33:28 JST (1787d)
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次に自然数の引き算を導入します。

命題1(自然数の減算の一意性)
ただ1つの写像\( {-} \colon \{ (n,m) \in \mathbb{N}^2 \mid m \in n + 1 \} \to \mathbb{N}, \ (n,m) \mapsto n - m \)が存在し、以下を満たす:
(1) 任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( n - 0 = n \)
(2) 任意の\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し、\( m \in n \)ならば\( n - m \neq 0 \)かつ\( n - (m + 1) = (n - m) - 1 \)

証明

自然数の加法の基本性質(4)より、任意の\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し、\( m \in n + 1 \)ならばただ1つの\( l \in \mathbb{N} \)が存在して\( l + m = n \)であり、そのような\( l \)\( a_{n,m} \)と置く。写像\( \{ (n,m) \in \mathbb{N}^2 \mid m \in n + 1 \} \to \mathbb{N}, \ (n,m) \mapsto a_{n,m} \)\( {-} \)と置く。

まず任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し、\( 0 + n = n \)より\( n - 0 = 0 \)である。次に任意の\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し、\( m \in n \)ならば自然数が順序数であること順序数の正則性により\( 0 + m = m \neq n \)となるので\( n - m \neq 0 \)であり、かつ\( ( (n - m) - 1) + (m + 1) = ( (n - m) - 1) + (1 + m) = ( ( (n - m) - 1) + 1) + m = (n - m) + m = n \)より\( n - (m + 1) = (n - m) - 1 \)である。

また、写像\( {\ominus} \colon \{ (n,m) \in \mathbb{N}^2 \mid m \in n + 1 \} \to \mathbb{N} \)が任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( n \ominus 0 = n \)を満たし、かつ\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し、\( m \in n \)ならば\( n \ominus m \neq 0 \)かつ\( n \ominus (m + 1) = (n \ominus m) \ominus 1 \)を満たすとする。\( {\ominus} = {-} \)を示す。\( n \in \mathbb{N} \)とする。任意の\( m \in n + 1 \)に対し\( n \ominus m = n - m \)となることを数学的帰納法で示す*1。まず\( n \ominus 0 = n = n - 0 \)である。次に\( m \in n + 1 \)\( m + 1 \in n + 1 \)かつ\( n \ominus m = n - m \)を満たすとする*2と、\( (n \ominus (m + 1)) + (m + 1) = ( (n \ominus m) \ominus 1) + (m + 1) = ( (n \ominus m) \ominus 1) + (1 + m) = ( ( (n \ominus m) \ominus 1) + 1) + m = (n \ominus m) + m = n \)より\( n \ominus (m + 1) = n - (m + 1) \)である。すなわち、任意の\( m \in n + 1 \)に対し\( n \ominus m = n - m \)となる。

それでは引き算\( {-} \)の性質を確認しましょう。自然数の和算の基本性質の確認は大変でしたが、引き算は足し算の逆演算として定義していたため、その性質の多くが既に確認した足し算の性質から簡単に従います。逆に引き算の性質を、自然数の減算の一意性だけで証明しようとすると、自然数の和算の基本性質と同様またはそれ以上の手間がかかります。

定理2(自然数の減算の基本性質)
(1) 任意の\( n \in \mathbb{N} \)と任意の\( m \in n + 1 \)に対し\( (n - m) + m = n \)
(2) 任意の\( n \in \mathbb{N} \)と任意の\( m \in n + 1 \)に対し\( (n + m) - m = n \)
(3) 任意の\( n \in \mathbb{N} \)と任意の\( m \in n + 1 \)に対し\( (n + 1) - (m + 1) = n - m \)
(4) 任意の\( (n,m,l) \in \mathbb{N} \)に対し、\( m + l \in n + 1 \)ならば\( n - (m + l) = (n - m) - l \)

証明

(1) 任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し、\( (n - m) + m = n \)であることは定義より従う。

(2) 次に\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し、\( n + m = n + m \)\( {-} \)の定義より\( (n + m) - m = n \)である。

(3) 任意の\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し、\( m \in n + 1 \)ならば\( (n - m) + (m + 1) = ( (n - m) + m) + 1 = n + 1 \)より\( (n + 1) - (m + 1) = n - m \)である。

(4) 任意の\( (n,m,l) \in \mathbb{N} \)に対し、\( m + l \in n + 1 \)ならば\( ( (n - m) - l) + (m + l) = ( (n - m) - l) + (l + m) = ( ( (n - m) - l) + l) + m = (n - m) + m = n \)である。

引き算の基本性質を確認しました。それでは、これらを使って実際に計算をしてみましょう。

演習3(引き算の計算演習)
以下を計算せよ。
(1) \( 1 - 1 \)
(2) \( 3 - 2 \)
(3) \( 4 - 4 \)
(4) \( 6 - 3 \)
(5) \( 9 - 7 \)

以上で引き算に慣れることが出来たと思います。それでは次に掛け算を導入します。




*1 つまり[[量化の有界な>述語論理#bounded]][[論理式>述語論理#substitution]]&mathjax{\Phi(x)};を&mathjax{(x \in n + 1) \to (\exists l \in n + 1,( (n,x), l) \in \Gamma_{\ominus} \cap \Gamma_{-})};と置き、&mathjax{\Phi(x)};に対し[[数学的帰納法>コラム 数学的帰納法#induction]]を適用するという意味です。
*2 一般の&mathjax{m \in \mathbb{N}};を考える必要がない理由は、&mathjax{m + 1 \notin n + 1};ならば&mathjax{\Phi(m + 1)};が成り立つからです。