自然数の足し算の定義

Last-modified: Tue, 31 Jan 2017 21:26:41 JST (1768d)
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まずは自然数の足し算を導入します。

命題1(自然数の和算の一意存在性)
ただ1つの写像\( {+} \colon \mathbb{N}^2 \to \mathbb{N}, \ (n,m) \mapsto n + m \)が存在し、以下を満たす:
(1) 任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( n + 0 = n \)
(2) 任意の\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し\( n + (m \cup \{ m \}) = (n + m) \cup \{ n + m \} \)

証明

極限順序数が後続で閉じること\( \mathbb{N} \)が極限順序数であることにより写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ n \mapsto n \cup \{ n \} \)が定まり、それを\( \sigma \)と置く。

任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し、2項間漸化式の解の一意存在性により、\( \mathbb{N} \)の点列\( (a_{n,m})_{m \in \mathbb{N}} \)であって2項間漸化式\( (n,\sigma) \)を満たすものがただ1つ存在する。写像\( \mathbb{N}^2 \to \mathbb{N}, (n,m) \mapsto a_{n,m} \)\( {+} \)と置くと、定義から任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( n + 0 = n \)でありかつ任意の\( n \in \mathbb{N} \)と任意の\( m \in \mathbb{N} \)に対し\( n + \sigma(m) = \sigma(n + m) \)である。

更に写像\( \oplus \colon \mathbb{N}^2 \to \mathbb{N}, (n,m) \mapsto n \oplus m \)が、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( n \oplus 0 = n \)を満たし、かつ任意の\( n \in \mathbb{N} \)と任意の\( m \in \mathbb{N} \)に対し\( n \oplus \sigma(m) = \sigma(n \oplus m) \)を満たすとする。\( {\oplus} = {+} \)であることを示す。仮定より、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( (n \oplus m)_{m \in \mathbb{N}} \colon \mathbb{N} \to \mathbb{N} \)は2項間漸化式\( (n,\sigma) \)を満たし、従って\( (n \oplus m)_{m \in \mathbb{N}} = (a_{n,m})_{m \in \mathbb{N}} = (n + m)_{m \in \mathbb{N}} \)である。以上より、\( {\oplus} = {+} \)である。

それでは足し算の定義に従って実際に計算をしてみましょう。

定理2(\( 1 + 1 = 2 \)であること)
\( 1 + 1 = 2 \)である。

証明

\[ 1 + 1 = 1 + (0 \cup \{ 0 \}) = (1 + 0) \cup \{ 1 + 0 \} = 1 \cup \{ 1 \} = 2 \]

毎回このように具体的な計算をすることは面倒なので、一般の状況で成り立つ足し算\( {+} \)の性質を確認しましょう。簡単なようで、とても骨が折れます。

定理3(自然数の和算の基本性質)
(1) 任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( n + 1 = n \cup \{ n \} \)
(2) 任意の\( (n,m,l) \in \mathbb{N}^3 \)に対し、\( m \in n \)ならば\( m + l \in n + l \)
(3) 任意の\( (n,m,l) \in \mathbb{N}^3 \)に対し、\( m + l = n + l \)ならば\( m = n \)
(4) 任意の\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し、\( m \in n \cup \{ n \} \)ならばただ1つの\( l \in \mathbb{N} \)が存在して\( l + m = n \)
(5) 任意の\( (n,m,l) \in \mathbb{N}^3 \)に対し\( (n + m) + l = n + (m + l) \)
(6) 任意の\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し\( n + m = m + n \)

証明

極限順序数が後続で閉じること\( \mathbb{N} \)が極限順序数であることにより写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ n \mapsto n \cup \{ n \} \)が定まり、それを\( \sigma \)と置く。

(1) 任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( n + 1 = n + \sigma(0) = \sigma(n + 0) = \sigma(n) \)である。

(2) \( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)とし、\( m \in n \)とする。任意の\( l \in \mathbb{N} \)に対し\( m + l \in n + l \)となることを数学的帰納法で示す*1。まず\( m + 0 = m \in n = n + 0 \)である。次に\( l \in \mathbb{N} \)\( m + l \in n + l \)を満たすとすると、後続が\( \in \)を保つことより\( m + \sigma(l) = \sigma(m + l) \in \sigma(n + l) = n + \sigma(l) \)である。従って任意の\( l \in \mathbb{N} \)に対し\( m + l \in n + l \)となる。

(3) \( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)とする。任意の\( l \in \mathbb{N} \)に対し、\( m + l = n + l \)ならば\( m = n \)であることを数学的帰納法で示す*2。まず\( m + 0 = n + 0 \)ならば\( m = m + 0 = n + 0 = n \)である。次に、\( l \in \mathbb{N} \)\( m + l = n + l \)ならば\( m = n \)を満たすとする。\( m + \sigma(l) = n + \sigma(l) \)と仮定する。\( \sigma(m + l) = m + \sigma(l) = n + \sigma(l) = \sigma(n + l) \)であるので、後続が\( \in \)を保つことより\( m + l = n + l \)である。従って仮定より、\( m = n \)である。以上より、\( m + \sigma(l) = n + \sigma(l) \)ならば\( m = n \)が成り立つ。すなわち、任意の\( l \in \mathbb{N} \)に対し、\( m \in n \)ならば\( m + l \in n + l \)である。

(4) \( m \in \mathbb{N} \)とする。任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し、\( m \in \sigma(n) \)ならばただ1つの\( l \in \mathbb{N} \)が存在して\( m + l = n \)となることを示す。そのような\( l \)の一意性は、上の議論により示された写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ l \mapsto l + m \)の単射性から従う。任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対しある\( l \in \mathbb{N} \)が存在して\( m + l = n \)となることを\( n \)についての数学的帰納法で示す*3。まず\( m \in \sigma(0) = \{ 0 \} \)ならば\( m = 0 \)となり、\( m + 0 = m = 0 \)である。次に\( n \in \mathbb{N} \setminus m \)に対し、\( m \in \sigma(n) \)ならばある\( l \in \mathbb{N} \)が存在して\( m + l = n \)を満たすとする。\( \sigma(m) \in \sigma(n) \)と仮定する。この時\( m \in \sigma(m) \in \sigma(n) \)自然数が順序数であることから\( m \in \sigma(n) \)である。従って仮定よりある\( l \in \mathbb{N} \)が存在して\( m + l = n \)を満たし、\( m + \sigma(l) = \sigma(m + l) = \sigma(n) \)である。すなわち、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し、\( m \in \sigma(n) \)ならばある\( l \in \mathbb{N} \)が存在して\( l + m = n \)である。

(5) \( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)とする。任意の\( l \in \mathbb{N} \)に対し\( (n + m) + l = n + (m + l) \)であることを示す。写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ l \mapsto (n + m) + l \)\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ l \mapsto n + (m + l) \)をそれぞれ\( f \)\( g \)と置く。\( f(0) = (n + m) + 0 = n + m = n + (m + 0) = g(0) \)かつ\( f(\sigma(l) ) = (n + m) + (\sigma(l) ) = \sigma( (n + m) + l) \)\( g(\sigma(l) ) = n + (m + \sigma(l) ) ) = n + \sigma(m + l) = \sigma( (n + m) + l) \)より、\( f \)\( g \)は共に2項間漸化式\( (n + m,\sigma) \)を満たす。従って2項間漸化式の解の一意存在性により、\( f = g \)である。すなわち任意の\( l \in \mathbb{N} \)に対し\( (n + m) + l = f(l) = g(l) = n + (m + l) \)である。

(6) 任意の\( (n,m) \in \mathbb{N}^2 \)に対し\( n + m = m + n \)であることを示す。そのためにまず、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( 0 + n = n \)であることを示す。\( 0 + 0 = 0 \)であり、かつ\( 0 + \sigma(n) = \sigma(0 + n) \)であるので、写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ n \mapsto 0 + n \)\( \textrm{id}_{\mathbb{N}} \)は共に2項間漸化式\( (n,\sigma) \)を満たす。従って2項間漸化式の解の一意存在性により、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( 0 + n = n \)である。すなわち任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( n \oplus 0 = n \)である。また、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( 1 + n = n + 1 \)であることを示す。\( 1 + 0 = 1 = 0 + 1 \)であり、\( 1 + \sigma(n) = \sigma(1 + n) \)かつ\( \sigma(n) + 1 = (n + 1) + 1 = \sigma(n + 1) \)であるので、写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ n \mapsto 1 + n \)\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ n \mapsto n + 1 \)は共に2項間漸化式\( (1,\sigma) \)を満たす。従って2項間漸化式の解の一意存在性により、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し\( 1 + n = n + 1 \)である。

\( n \in \mathbb{N} \)とする。上の議論より\( n + 0 = n = 0 + n \)であり、\( n + \sigma(m) =\sigma(n + m) \)かつ\( \sigma(m) + n = (m + 1) + n = m + (1 + n) = m + (n + 1) = m + \sigma(n) = \sigma(m + n) \)より、写像\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ m \mapsto n + m \)\( \mathbb{N} \to \mathbb{N}, \ m \mapsto m + n \)は共に2項間漸化式\( (n,\sigma) \)を満たす。従って2項間漸化式の解の一意存在性により、任意の\( m \in \mathbb{N} \)に対し\( m + n = n + m \)である。

ここで、\( 1 + 1 = 2 \)であることの証明を参考にしつつ、自然数の和算の基本性質を用いて以下の演習に挑戦してみましょう。

演習4(足し算の計算演習)
以下を計算せよ。
(1) \( 2 + 1 \)
(2) \( 3 + 2 \)
(3) \( 1 + 5 \)
(4) \( 4 + 3 \)
(5) \( 3 + 6 \)

自然数\( n \)\( m \)に対し、論理式\( m \in n \)のことを\( m < n \)\( n > m \)と書き、\( m \subset n \)のことを\( m \leq n \)\( n \geq m \)と書くことが慣例であり、これらを「通常の真なる大小関係」と「通常の大小関係」等のように呼びます。

演習5(足し算の証明演習)
以下を証明せよ。
(1) \( 0 < 2 \)
(2) \( 3 \leq 2 \)でない
(3) \( 2 + 1 < 1 + 1 \)
(4) \( 5 \leq 4 + 2 \)
(5) \( 3 + 4 \leq 2 + 5 \)

以上で足し算に慣れることが出来たと思います。それでは次に引き算を導入します。




*1 つまり[[量化の有界な>述語論理#bounded]][[論理式>述語論理#substitution]]&mathjax{\Phi(x)};を&mathjax{\exists a \in \mathbb{N}, \exists b \in \mathbb{N}, ( ( ( (m,x), a) \in \Gamma_{+}) \wedge ( ( (n,x), b) \in \Gamma_{+}) ) \wedge (a \in b)};と置き、&mathjax{\Phi(x)};に対し[[数学的帰納法>コラム 数学的帰納法#induction]]を適用するという意味です。
*2 つまり[[量化の有界な>述語論理#bounded]][[論理式>述語論理#substitution]]&mathjax{\Phi(x)};を&mathjax{\exists a \in \mathbb{N}, \exists b \in \mathbb{N}, ( ( ( (m,x), a) \in \Gamma_{+}) \wedge ( ( (n,x), b) \in \Gamma_{+}) ) \wedge ( (a = b) \to (m = n) )};と置き、&mathjax{\Phi(x)};に対し[[数学的帰納法>コラム 数学的帰納法#induction]]を適用するという意味です。
*3 つまり[[量化の有界な>述語論理#bounded]][[論理式>述語論理#substitution]]&mathjax{\Phi};を&mathjax{(m \in x \cup \{ x \}) \to (\exists l \in \mathbb{N}, ( (m,l),x) \in \Gamma_{+})};と置き、&mathjax{\Phi(x)};に対し[[数学的帰納法>コラム 数学的帰納法#induction]]を適用するという意味です。