開集合

Last-modified: Thu, 15 Jun 2017 22:46:43 JST (1632d)
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ここでは「位相空間」という数学の基本概念を導入します。そのための準備として、集合の「開集合系」という概念を紹介します。

定義1(開集合系の定義)
\( X \)を集合とする。\( X \)開集合系(system of open sets)とは、\( \mathscr{P}(X) \)の部分集合\( \mathscr{O}_X \)であって以下を満たすものである:
(1) \( X \in \mathscr{O}_X \)である。
(2) 空でない任意の有限部分集合\( \mathscr{U} \subset \mathscr{O}_X \)に対し、\( \bigcap_{U \in \mathscr{U}} U \in \mathscr{O}_X \)である*1
(3) 任意の部分集合\( \mathscr{U} \subset \mathscr{O}_X \)に対し、\( \bigcup_{U \in \mathscr{U}} U \in \mathscr{O}_X \)である*2

それでは位相空間を導入します。位相空間には幾つもの等価な定式化がありますが、Encyclopedia of \( P \)-adic Numbersでは開集合系を用いた定式化を採用します。

定義2(位相空間の定義)
位相空間(topological space)とは、集合\( X \)\( X \)開集合\( \mathscr{O}_X \)の組\( (X,\mathscr{O}_X) \)である。

\( (X,\mathscr{O}_X) \)を位相空間とします。その第1成分\( X \)\( (X,\mathscr{O}_X) \)下部構造の集合(underlying set)または台集合と呼び、第2成分\( \mathscr{O}_X \)\( (X,\mathscr{O}_X) \)位相(topology)と呼びます。\( \mathscr{O}_X \)の元を\( (X,\mathscr{O}_X) \)開集合(open subset)と呼びます。\( x \in X \)に対し、\( U \subset X \)\( \mathscr{O}_X \)に関する近傍(neighborhoodまたはneighbourhood)であるとは、ある\( U' \in \mathscr{O}_X \)が存在して\( x \in U' \subset U \)となるということです*3\( \mathscr{O}_X \)に紛れがない限り\( (X,\mathscr{O}_X) \)を単に\( X \)と略記することが多く、その場合は\( (X,\mathscr{O}_X) \)開集合を単に\( X \)開集合と呼び、\( X \)の部分集合が\( X \)開集合であるということを単に開(open)であると表し、\( \mathscr{O}_X \)に関する近傍を単に近傍と呼びます。

位相空間を定義するには、開集合系を構成すれば良いことになります。開集合系を構成する方法として、「準基」という概念を用いるものがあります。\( \mathscr{U}_0 \subset \mathscr{O}_X \)を部分集合とします。\( X \)開集合系であって\( \mathscr{U}_0 \)を含むものの全体を\( \Sigma \)と置くと、\( \mathscr{P}(X) \in \Sigma \)となり特に\( \Sigma \neq \emptyset \)であることが分かります。そこで、\( \bigcap_{\mathscr{U} \in \Sigma} \mathscr{U} \)を考えると、これが再び\( \Sigma \)に属するということが容易に分かり、つまり\( \mathscr{U}_0 \)を含む\( X \)の最小の開集合系となります。この開集合系のことを\( \mathscr{U}_0 \)が生成する位相または\( \mathscr{U}_0 \)準基(subbase)とする位相と呼びます。

それでは位相空間の例を見ましょう。

例3(位相空間の例)
(1) \( X \)を集合とする。\( \mathscr{P}(X) \)\( X \)開集合系をなし、従って\( (X,\mathscr{P}(X) ) \)};は位相空間をなす。\( \mathscr{P}(X) \)\( X \)離散位相(discrete topology)と呼ぶ。また位相空間が離散(discrete)であるとは、その位相が下部構造の集合の離散位相と一致するということである。
(2) \( X \)を集合とする。\( \{ \emptyset, X \} \)\( X \)開集合系をなし、従って\( (X, \{ \emptyset, X \} ) \)は位相空間をなす。\( \{ \emptyset, X \} \)\( X \)密着位相(indiscrete topology)と呼ぶ。また位相空間が密着(indiscrete)であるとは、その位相が下部構造の集合の密着位相と一致するということである。
(3) \( (X,(P,\leq),d) \)一般超距離空間とする。この時、集合族\( \{ \{ x \in X \mid d(x,x_0) < \epsilon \} \mid (x_0,\epsilon) \in X \times (P \setminus \{ 0_P \}) \} \)が生成する位相をここでは一般超距離位相と呼ぶ。一般超距離空間にはしばしば断りなく一般超距離位相を与える。特に付値にはこの方法で自然に位相が与えられる。

距離空間を始めとする一般超距離空間は2点間の「近さ」を非負全順序可換モノイドによってある意味で「数値化」したものでしたが、位相空間は近さの数値化を忘れ、単にどんな部分集合がどんな点の「近傍」であるかのみを抽象的に抜き出した概念である'と考えられます。もちろん、一般超距離空間に一般超距離位相を与えたものとは限らない位相空間も存在しますので「近さの数値化を忘れた」という表現には語弊がありますが、気になる場合は「近さの数値化を与えず」に置き換えて下さい。

さて、位相を用いて初めて意味を持つ重要な概念である「収束」というものを次に説明していきます。

  • 収束
  • 閉集合
  • コンパクト性
  • 分離性
  • 全不連結性
  • 局所コンパクト性



*1 ここだけの便宜上&mathjax{\bigcap_{U \in \emptyset} U};を&mathjax{X};として定義しておけば、(2)から「空でない」という仮定を外した条件は、(1)かつ(2)と同値になります。
*2 &mathjax{\emptyset \subset \mathscr{O}_X};ですので、特に&mathjax{\emptyset = \bigcup_{U \in \mathscr{U}} U \in \mathscr{O}_X};が従います
*3 実は各点の近傍全体の情報から&mathjax{\mathscr{O}_X};を復元することが出来るため、文献によっては位相空間の定義に開集合系を用いず近傍の情報のみを用いることがあります。