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Last-modified: Thu, 29 Dec 2016 23:31:03 JST (2675d)
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定義3(整域と体の定義)
\( R \)整域(integral domain)であるとは、\( R \setminus \{ 0_R \} \subset R \)\( (R,\times) \)部分モノイドをなすということである。これは\( R \)が零環でなく*1かつ任意の\( (f_i)_{i \in 2} \in (R \setminus \{ 0_R \})^2 \)に対して\( f_0 f_1 \neq 0_R \)が成り立つということである。また\( R \)体(field)であるとは、\( R \setminus \{ 0_R \} \subset R \)\( (R,\times) \)部分群をなすということである。これは\( R^{\times} = R \setminus \{ 0_R \} \)ということである。

定義から明らかに、体は整域となります。それでは整域や体の例を見ていきましょう。

例4(整域と体の例)
\( \mathbb{Z} \)\( \mathbb{Z}_p \)は通常の加法と乗法について体でない整域をなし、\( \mathbb{Q} \)\( \mathbb{Q}_p \)は通常の加法と乗法について体をなす。

部分環が体である場合は部分体(subfield)と呼びます。

命題6(整域と体の関係)
\( R \)が整域である必要十分条件は、\( R \)が体の部分環であるということである。

実はここまでの定義だけから整域と体の関係を示すのは少し大変で、「単射環準同型」という概念を導入すると楽になります。従って整域と体の関係の証明は後回しにして、「環準同型」の説明に進みましょう。

ために、「商体」という概念を導入します。そのために少し準備をしましょう。

\( D \)を整域とします。\( (D \setminus \{ 0_D \}) \times D \)上の同値関係\( \sim_D \)を以下のように定めます。

\( ((f_{i,j})_{j \in 2})_{i \in 2} \in ( (D \setminus \{ 0_D \}) \times D)^2 \)に対し、\( (f_{0,j})_{j \in 2} \sim_D (f_{1,j})_{j \in 2} \)である必要十分条件は\( f_{0,0} f_{1,1} = f_{0,1} f_{1,0} \)である。

商集合\( ( (D \setminus \{ 0_D \}) \times D)/\sim_D \)\( \textrm{Frac}(D) \)と書き、各\( (f_j)_{j \in 2} \in (D \setminus \{ 0_D \}) \times D \)の剰余類を\( \frac{f_1}{f_0} \)と表記します。\( \textrm{Frac}(D) \)の上に演算を定義します。

演習7(商体に演算が誘導されること)
\( (q_i)_{i \in 2} \in \textrm{Frac}(D)^2 \)とする。\( q_0 \)\( q_1 \)の代表元\( (f_{0,j})_{j \in 2} \)\( (f_{1,j})_{j \in 2} \)を用いて\( q_0 + q_1 := \frac{f_{0,1} f_{1,0} + f_{0,0} f_{1,1}}{f_{0,0} f_{1,0}} \)\( q_0 \times q_1 := \frac{f_{0,1} f_{1,1}}{f_{0,0} f_{1,0}} \)と定めると、これらは代表元の取り方によらない。

商体に演算が誘導されること#fractionalから、写像\( + \colon \textrm{Frac}(D)^2 \to \textrm{Frac}(D) \)\( \times \colon \textrm{Frac}(D)^2 \to \textrm{Frac}(D) \)であって以下を満たすものがただ1つ存在します。

|(1) 任意の

\( \frac{f_{0,1}}{f_{0,0}} + := \frac{f_{0,1} f_{1,0} + f_{0,0} f_{1,1}}{f_{0,0} f_{1,0}} \)\( q_0 \times q_1 := \frac{f_{0,1} f_{1,1}}{f_{0,0} f_{1,0}} \)
は以下を満たす唯一の写像\( + \colon \textrm{Frac}(D)^2 \)

(乗法的逆元の存在)任意の\( f \in R \setminus \{ 0_{(R,+)} \} \)に対し、\( f \)\( (R,\times) \)の可逆元である*2

付値環\( x = (k,O_k) \)に対して、商群\( k^{\times}/O_k^{\times} \)\( \Gamma_x \)等と表記し*3\( (k,O_k) \)値群(value group)と呼ぶ。商写像\( k^{\times} \twoheadrightarrow \Gamma_x \)と恒等写像\( \{ 0_k \} \to \{ 0_k \} \)を延長して得られる写像\( \lvert {-} \rvert_x \colon k = k^{\times} \cup \{ 0_k \} \to \Gamma_x \sqcup \{ 0_k \}, \ c \mapsto \lvert c \rvert \)\( (k,O_k) \)付値(valuation)と呼ぶ。\( \Gamma_x \)が加法群\( \mathbb{Z} \)と同型である時、\( (k,O_k) \)離散付値環(discrete valuation ring)または離散付値体(discrete valuation field)と呼ぶ。

グルポイドへ戻る。

ここでは、特別な代数構造である「束」を扱います。束は2つの演算を持つ代数構造ですが、双マグマと違って2つの演算の間に分配法則が成立するとは限らず、またどちらの演算についてもモノイドをなすとは限りません。

定義1(束の定義)
束(latice)とは集合\( L \)と写像\( \vee \colon L^2 \to L \)と写像\( \wedge \colon L^2 \to L \)の3つ組\( (L,\vee,\wedge) \)であって、以下を満たすものである:
(1) \( (L,\vee) \)は可換半群をなす。
(2) \( (L,\wedge) \)は可換半群をなす。
(3) 任意の\( (a_i)_{i \in 2} \in L^2 \)に対し、\( a \vee (a \wedge b) = a \)が成り立つ。
(4) 任意の\( (a_i)_{i \in 2} \in L^2 \)に対し、\( a \wedge (a \vee b) = a \)が成り立つ。

\( (L,\vee,\wedge \)の演算\( \vee \)\( \wedge \)をそれぞれ\( (L,\vee,\wedge) \)結び(join)または交わり(meet)呼びます。(3)と(4)の条件を吸収律(absorbing law)と呼びます。束は冪等律(identity law)と呼ばれる、次の特別な性質を満たします。

命題2(冪等律)
\( (L,\vee,\wedge) \)を束とする。この時、任意の\( a \in L \)に対し、\( a \vee a = a = a \wedge a \)が成り立つ。

証明

吸収律により、\( a \vee a = a \vee (a \wedge (a \vee a) ) = a \)となり、また\( a \wedge a = a \wedge (a \vee (a \wedge a) ) = a \)となる。




*1 cf. [[章末問題7 演習3(1)>章末問題7#third]]
*2 &mathjax{0_{(R,+)}};が&mathjax{(R,\times)};の可逆元である必要はありません。
*3 これは既に定義した、クラス関数&mathjax{f};のグラフ&mathjax{\Gamma_f};と記法が衝突していますが、混乱が生じることはまずありません。