正則性公理

Last-modified: Mon, 01 May 2017 21:43:42 JST (1678d)
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補遺1 その他の公理へ戻る。

ここでは2元集合の存在までに課された全ての公理*1を課します。

公理1(正則性公理*2
任意の集合\( X \)に対し、\( X \neq \emptyset \)ならばある\( x \in X \)が存在し、\( x \cap X = \emptyset \)である。

少し分かりにくい公理ですが、後に加わる幾つかの公理の上で定義される「\( \in \)-降鎖列」という概念を用いると、この公理を理解しやすくなります。詳しくは次を参照して下さい。

以下では正則性公理を常に仮定することにします。それによって、\( \in \)が次の重要な性質を満たすことが分かります。

命題2(\( \in \)の非循環性)
(1) 2つの任意のクラス\( X \)\( X' \)に対し、\( X \notin X' \)または\( X' \notin X \)である。
(2) 任意のクラス\( X \)に対し、\( X \notin X \)である。

証明

(1) 背理法で示す。\( X \in X' \)かつ\( X' \in X \)と仮定する。この時\( X \)\( X' \)に属するので集合をなし、\( X' \)\( X \)に属するので集合をなす。従って、集合\( \{ X, X' \} \)が意味を持つ。\( X \in \{ X,X' \} \)より、\( \{ X, X' \} \neq \emptyset \)である。正則性公理より、ある\( x \in \{ X,X' \} \)が存在して\( x \cap \{ X,X' \} = \emptyset \)である。\( \{ X,X' \} \)の定義より、\( x = X \)または\( x = X' \)である。

\( x = X \)とする。\( X' \in X = x \)かつ\( X' \in \{ X,X' \} \)より、\( X' \in x \cap \{ X,X' \} \)である。これは\( x \cap \{ X,X' \} = \emptyset \)に反し、矛盾する。\( x = X' \)とする。\( X \in X' = x \)かつ\( X \in \{ X,X' \} \)より、\( X \in x \cap \{ X,X' \} \)である。これは\( x \cap \{ X,X' \} = \emptyset \)に反し、矛盾する。以上より、\( X \notin X' \)または\( X' \notin X \)である。

(2) \( X \)\( X \)自身に(1)を適用し、\( X \notin X \)または\( X \notin X \)となる。すなわち\( X \notin X \)である。

\( \in \)の非循環性の系として、正則性公理の下では次が成り立ちます。

系3(ラッセル集合が集合全体であること)
ラッセル集合\( \{x \mid x \notin x \} \)は集合全体のなすクラス\( V \)と等しい。

また、ラッセルの背理ラッセル集合が集合全体であることにより、集合全体が集合をなさないことも分かります。なお、集合全体が集合でないこと正則性公理を課さなくても、集合に対する分出公理や冪集合の公理等の別の公理から証明することも可能です*3

\( \in \)の非循環性によって、\( \in \)という関係は真の不等号\( < \)や真の包含関係\( \subsetneq \)のような、どんな状況でも左右を入れ替えられない関係性を持つことが分かります。また、\( < \)\( \subsetneq \)には「推移律」と呼ばれる性質が成り立ちます。すなわち、\( a < b < c \)であれば\( a < c \)が成り立ち、\( A \subsetneq B \subsetneq C \)であれば\( A \subsetneq C \)が成り立ちます。それでは\( \in \)も同様かと言いますと、それは成り立ちません。

例4(\( \in \)が推移的でない例)
\( \emptyset \in \{ \emptyset \} \in \{ \{ \emptyset \} \} \)だが、\( \emptyset \notin \{ \{ \emptyset \} \} \)である。

集合全体を考えてしまうと\( \in \)が推移的でないですが、特定のクラスに制限して\( \in \)を考えれば、そこにおいては\( \in \)が推移的になります。そのようなクラスの典型例が、順序数という集合全体のなすクラス\( \textrm{Ord} \)です。

正則性公理を課すことで順序数の定義が非常に簡単になり、また順序数の持っていたいくつかの基本性質も一般の集合で成り立つことが分かります。しかしながら、Encyclopedia of \( P \)-adic Numbersにおいては断りのない限り、正則性公理を仮定しません。

  • 連続体仮説
  • 構成可能性公理
  • 到達不能基数の存在公理
  • 大域選択公理
  • \( 1=0 \)



*1 [[排中律>述語論理#EM]]、[[外延性公理>等号の定義#extensionality]]、[[クラスに対する分出公理>等号の定義#comprehension]]、[[空集合の存在公理>空集合の存在#existence]]、[[対公理>2元集合の存在#pair]]。
*2 基礎の公理(Axiom of Foundation)とも呼ばれます。
*3 cf. [[分出公理を用いた集合全体が集合でないことの証明>条件式の定める部分集合の存在#V]]、[[冪集合の公理を用いた集合全体が集合でないことの証明>コラム 集合の対等性#V]]